財産を相続したときの税金 ~相続税の計算の仕組み~

相続税

はじめに

相続税は、亡くなった方から相続や遺贈などで取得した財産の合計額が「基礎控除額」を超える場合にだけかかる税金です。つまり、財産が基礎控除額以下であれば相続税はかからず、申告も原則不要です。

この記事では、相続税がどのような流れで計算されるのかを、4つのステップと具体的な計算例でわかりやすく解説します。なお、宅地や建物の評価方法、申告と納税の手続きについては別の記事でご紹介します。

相続税がかかる財産・かからない財産

相続税の対象になるのは、相続や遺贈で取得した財産だけではありません。生前に贈与を受けた財産の一部も加算されます。

相続税の計算に含めるもの

  • 相続や遺贈によって取得した財産(預貯金、不動産、有価証券など)
  • 相続時精算課税の適用を受けて生前に贈与された財産(令和6年1月1日以後の贈与は、年110万円の基礎控除を差し引いた残額)
  • 暦年課税で生前に贈与された財産のうち、一定期間内のもの(令和6年1月1日以後の贈与は、相続開始前7年以内のもの)

相続税がかからないもの(非課税財産)

  • 墓所、仏壇、祭具など
  • 国や地方公共団体、特定の公益法人などに寄附した財産
  • 生命保険金のうち「500万円×法定相続人の数」まで
  • 死亡退職金のうち「500万円×法定相続人の数」まで

また、亡くなった方の借入金や未払の税金などの「債務」、お葬式にかかった「葬式費用」は、財産から差し引くことができます。

【ご注意】暦年課税の贈与の加算期間は、令和5年度の税制改正で従来の3年から段階的に7年へ延長されています。延長された4年間に受けた贈与については、合計100万円までは加算されません。

ステップ1:課税遺産総額を計算する

最初に、相続税がかかる部分である「課税遺産総額」を求めます。流れは次のとおりです。

  1. 遺産総額:相続や遺贈で取得した財産に、相続時精算課税の適用を受けた贈与財産を合計します。
  2. 遺産額:遺産総額から、債務・葬式費用・非課税財産を差し引きます。
  3. 正味の遺産額:遺産額に、加算の対象となる暦年課税の贈与財産を加えます。
  4. 課税遺産総額:正味の遺産額から、基礎控除額を差し引きます。

基礎控除額は次の式で計算します。

基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数

たとえば、法定相続人が配偶者と子ども2人の計3人なら、基礎控除額は4,800万円です。正味の遺産額がこの金額以下であれば、相続税はかかりません。

【養子がいる場合】法定相続人の数に含められる養子は、実子がいるときは1人まで、実子がいないときは2人までです。生命保険金・死亡退職金の非課税枠や、次の「相続税の総額」の計算でも同じです。

ステップ2:相続税の総額を計算する

相続税の総額は、実際の遺産分割にかかわらず、「法定相続分どおりに分けたと仮定して」計算します。そのため、どのように分けても家族全体の相続税の総額は変わりません。

  1. 課税遺産総額を、各法定相続人が法定相続分どおりに取得したと仮定します。
  2. それぞれの取得金額に下の速算表の税率を掛け、控除額を差し引いて税額を出します。
  3. 全員分の税額を合計したものが「相続税の総額」です。

法定相続分の主な例

相続人の構成 配偶者 その他の相続人
配偶者と子 2分の1 子:2分の1(人数で均等に分ける)
配偶者と父母(子がいない場合) 3分の2 父母:3分の1(人数で均等に分ける)
配偶者と兄弟姉妹(子も父母もいない場合) 4分の3 兄弟姉妹:4分の1(人数で均等に分ける)

相続税の速算表

法定相続分に応ずる取得金額 税率 控除額
1,000万円以下 10% ―
1,000万円超~3,000万円以下 15% 50万円
3,000万円超~5,000万円以下 20% 200万円
5,000万円超~1億円以下 30% 700万円
1億円超~2億円以下 40% 1,700万円
2億円超~3億円以下 45% 2,700万円
3億円超~6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

ステップ3・4:各人が実際に納める税額を計算する

相続税の総額を、各相続人・受遺者・相続時精算課税を適用した人が「実際に取得した正味の遺産額の割合」で按分します(ステップ3)。そこから各種の税額控除を差し引いたものが、各人の納付税額です(ステップ4)。

なお、配偶者・子・父母以外の方(兄弟姉妹や、養子でない孫など)が財産を取得した場合は、その方の税額に2割が加算されます(相続税額の2割加算)。

配偶者の税額軽減(配偶者控除)

配偶者が実際に取得した正味の遺産額が「1億6,000万円」までか、「配偶者の法定相続分相当額」までであれば、配偶者には相続税がかかりません。

  • この特例を受けるには、税額がゼロになる場合でも相続税の申告書の提出が必要です(申告要件)
  • 仮装や隠蔽されていた財産は、軽減の対象になりません。<参考>
    小規模宅地の特例を適用して相続税が0になる場合にも相続税の申告書の提出が必要です(申告要件)

その他の主な税額控除

控除の種類 内容
未成年者控除 相続人が18歳未満の場合、18歳に達するまでの年数1年につき10万円
障害者控除 相続人が障害者の場合、85歳に達するまでの年数1年につき10万円(特別障害者は20万円)
暦年課税に係る贈与税額控除 加算された暦年課税の贈与財産について支払った贈与税額
相続時精算課税に係る贈与税額控除 加算された相続時精算課税の贈与財産について支払った贈与税額(控除しきれない分は申告により還付)

計算例:正味の遺産額2億円を妻と子ども2人で相続した場合

正味の遺産額2億円を、妻と子ども2人が法定相続分どおりに相続すると、家族全体の相続税は2,700万円、実際の納税額は子ども各675万円・妻0円となります。

① 課税遺産総額

2億円 −(3,000万円 + 600万円 × 3人)= 1億5,200万円

② 法定相続分で分けて税率を掛ける → 相続税の総額

相続人 法定相続分 取得金額 税額の計算 税額
妻 2分の1 7,600万円 7,600万円 × 30% − 700万円 1,580万円
子A 4分の1 3,800万円 3,800万円 × 20% − 200万円  560万円
子B 4分の1 3,800万円 3,800万円 × 20% − 200万円  560万円
合計(相続税の総額) 2,700万円

③・④ 実際の取得割合で按分し、税額控除を差し引く

相続人 按分した税額 税額控除 実際に納める税金
妻 1,350万円 配偶者の税額軽減 ▲1,350万円 0円
子A 675万円 ― 675万円
子B 675万円 ― 675万円

妻は配偶者の税額軽減により納税額が0円になりますが、この軽減を受けるためには申告が必要です。
また一次相続で税額が最も低くなるケースは、遺産分割で妻が正味の遺産額2億円のうち1億6,000万円以上相続した場合です。
この場合の税額は、配偶者の税額軽減▲2,160万円となるため、540万円となります。

まとめ

  • 相続税は、正味の遺産額が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合にかかります。
  • 生前の贈与(暦年課税は相続開始前7年以内、相続時精算課税は全期間)も計算に含めるので注意が必要です。
  • 相続税の総額は法定相続人が法定相続分で取得したとみなして計算した場合の税額の合計額です。
  • 実際の納付税額は、相続税の総額を各相続人が取得した割合で按分し計算した金額から各種税額控除を差し引いた金額等となります。
  • 配偶者の税額軽減を使えば配偶者の税額が0円になることもありますが、この場合には申告が必要です(申告要件)。
  • 小規模宅地の特例を使えば税額が0円になることもありますが、こちらについても申告が必要です(申告要件)。

相続税は、財産の評価や遺産分割の仕方で納税額が大きく変わる税金です。財産のうちの宅地や建物の評価方法、申告と納税の手続きについては、次回以降の記事で解説します。

当事務所では相続税の試算や申告、生前の相続対策のご相談を承っています。お気軽にお問い合わせください。

※本記事は国税庁のパンフレット「令和8年度版_暮らしの税情報」を参考に作成しています。

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