土地と建物の相続税評価方法 ~自用地・貸家建付地・貸宅地の違い~

不動産評価

はじめに

相続税を計算するときの土地は「路線価」や「倍率」を基に、建物は「固定資産税評価額」を基に評価します。さらに、同じ土地・建物でも自分で使っているか、人に貸しているかによって評価額が大きく変わります。

前回の記事「財産を相続したときの税金 ~相続税の計算の仕組み~」では、相続税の計算の流れをご紹介しました。今回は、その計算のもとになる宅地と建物の評価方法を、利用状況ごとの違いと計算例を使って解説します。

宅地の評価の基本:路線価方式と倍率方式

宅地は「路線価方式」または「倍率方式」で評価します。どちらで評価するかは地域ごとに決まっており、路線価や倍率は国税庁ホームページの「路線価図・評価倍率表」で調べることができます。

評価方式 使う地域 計算方法
路線価方式 主に市街地(路線価が定められている地域) 道路に面する標準的な宅地の1㎡当たりの価額(路線価)× 各種補正率 × 地積
倍率方式 路線価が定められていない地域 固定資産税評価額 × 地域ごとの倍率

路線価方式の「各種補正率」には、奥行の長さに応じた「奥行価格補正率」のほか、角地・不整形地など土地の形状に応じた補正があります。

路線価方式の計算例

普通住宅地区にある、間口10m・奥行18m(180㎡)の土地で、路線価が1㎡当たり30万円の場合

30万円(路線価)× 1.00(奥行価格補正率)× 180㎡ = 5,400万円

※普通住宅地区で奥行18mの場合の奥行価格補正率は1.00です。

土地の利用区分ごとの評価

土地を人に貸していると、所有者が自由に使えない分だけ評価額が下がります。いずれも、前の章で求めた「自用地としての評価額」が出発点です。

1. 自用地

所有者が自分で使っている土地です(自宅の敷地、自分の事業用の土地、空き地など)。路線価方式または倍率方式で計算した額がそのまま評価額になります。

 自用地の評価額 = 路線価 × 補正率 × 地積(路線価方式)
または
固定資産税評価額 × 倍率(倍率方式)

2. 貸家建付地

所有者が建てたアパートや貸家など、人に貸している建物の敷地です。入居者がいるため土地も自由に使えず、その分評価額が下がります。

貸家建付地の評価額 = 自用地の評価額 ×(1 − 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合)

  • 借地権割合:路線価図に記号(A~G)で表示されています(A=90%、B=80%、C=70%、D=60%、E=50%、F=40%、G=30%)。
  • 借家権割合:全国一律で30%です。
  • 賃貸割合:建物の床面積のうち、相続開始時に実際に貸している部分の割合です。一時的な空室は貸しているものとして扱える場合があります。

3. 貸宅地

土地を人に貸し、その人(借地人)が建物を建てている土地です。借地人には借地権があるため、所有者が持っているのは「底地」の部分だけになります。

貸宅地の評価額 = 自用地の評価額 ×(1 − 借地権割合)

【ご注意】親族に地代をもらわずに無償で土地を貸している場合(使用貸借)は、貸宅地ではなく自用地として評価します。また、権利金の授受などの慣行がない地域では、評価の仕方が異なる場合があります。

建物の評価

建物は、その建物の固定資産税評価額を基に評価します。固定資産税評価額は、毎年届く固定資産税の課税明細書や、市区町村で取得できる評価証明書で確認できます。

1. 自用地の建物(自用家屋)

自宅など、所有者が自分で使っている建物は、固定資産税評価額がそのまま評価額になります。

自用家屋の評価額 = 固定資産税評価額 × 1.0

2. 貸家建付地の建物(貸家)

アパートや貸家など、人に貸している建物は、入居者の権利(借家権)の分だけ評価額が下がります。

貸家の評価額 = 固定資産税評価額 ×(1 − 借家権割合30% × 賃貸割合)

すべての部屋を貸している場合(賃貸割合100%)、評価額は固定資産税評価額の70%になります。

【土地と建物の組み合わせ】自分の土地に自分でアパートを建てて貸している場合、土地は「貸家建付地」、建物は「貸家」として、両方の評価額が下がります。一方、貸宅地の上の建物は借地人の財産なので、土地の所有者の相続財産にはなりません。

計算例:利用状況で評価額はここまで変わる

同じ土地(自用地としての評価額5,400万円)でも、自宅なら5,400万円、アパートの敷地なら4,266万円、人に貸している底地なら1,620万円と評価額が大きく変わります。

前提条件

  • 土地:前の章の計算例の土地(自用地としての評価額5,400万円)、借地権割合70%(路線価図の記号C)
  • 建物:固定資産税評価額2,000万円
  • 貸している場合は満室(賃貸割合100%)

土地の評価額

利用区分 計算 評価額
自用地 5,400万円 5,400万円
貸家建付地 5,400万円 ×(1 − 70% × 30% × 100%) 4,266万円
貸宅地 5,400万円 ×(1 − 70%) 1,620万円

建物の評価額

利用区分 計算 評価額
自用家屋 2,000万円 × 1.0 2,000万円
貸家 2,000万円 ×(1 − 30% × 100%) 1,400万円

自宅として使っている場合は土地と建物で合計7,400万円ですが、アパートとして貸している場合は合計5,666万円と、約1,700万円低くなります。

小規模宅地等の特例と区分所有マンション

小規模宅地等の特例

亡くなった方などが事業や居住用に使っていた土地のうち、一定の面積までの部分は、評価額から次の割合が減額されます。

区分 限度面積 減額割合 主に対応する土地
一定の事業用の土地(特定事業用宅地等) 400㎡ 80% 自用地(店舗・事務所など)
一定の居住用の土地(特定居住用宅地等) 330㎡ 80% 自用地(自宅の敷地)
一定の貸付用の土地(貸付事業用宅地等) 200㎡ 50% 貸家建付地・貸宅地

たとえば計算例の土地(180㎡、5,400万円)が自宅の敷地で要件を満たす場合には、評価額は5,400万円の80%が減額され1,080万円になります。

  • この特例を受けるには、取得する人や利用状況についての要件を満たす必要があります。
  • 小規模宅地等の特例を適用することで税額がゼロになる場合でも、相続税の申告書の提出が必要です(申告要件)。

居住用の区分所有財産(分譲マンション)

令和6年1月1日以後の相続などでは、分譲マンションの敷地利用権と区分所有権の評価額に、一定の補正をする場合があります。築年数や階数などを基に、市場価格との差を調整する仕組みです。
詳しくは国税庁のパンフレット「居住用の区分所有財産」の評価が変わりましたをご覧ください。

根拠条文・通達

項目 根拠
財産の評価の原則(時価) 相続税法第22条、財産評価基本通達1
土地の評価上の区分(地目別評価) 財産評価基本通達7
宅地の評価方式(路線価方式・倍率方式) 財産評価基本通達11
路線価方式・路線価 財産評価基本通達13・14
奥行価格補正 財産評価基本通達15、付表1「奥行価格補正率表」
倍率方式 財産評価基本通達21・21-2
貸宅地の評価 財産評価基本通達25
貸家建付地の評価(賃貸割合を含む) 財産評価基本通達26
借地権の評価(借地権割合) 財産評価基本通達27
家屋の評価(固定資産税評価額×1.0) 財産評価基本通達89、別表1
貸家の評価 財産評価基本通達93
借家権の評価(借家権割合) 財産評価基本通達94
使用貸借の土地の取扱い 「使用貸借に係る土地についての相続税及び贈与税の取扱いについて」(昭和48年個別通達)
小規模宅地等の特例 租税特別措置法第69条の4
居住用の区分所有財産(分譲マンション)の評価 「居住用の区分所有財産の評価について」(令和5年9月28日付 法令解釈通達)

参考(国税庁の公表資料)

まとめ

区分 評価の計算式
自用地 路線価 × 補正率 × 地積または 固定資産税評価額 × 倍率
貸家建付地 自用地の評価額 ×(1 − 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合)
貸宅地 自用地の評価額 ×(1 − 借地権割合)
自用家屋 固定資産税評価額 × 1.0
貸家 固定資産税評価額 ×(1 − 借家権割合 × 賃貸割合)

土地や建物の評価は、形状による補正、賃貸割合、小規模宅地等の特例など、判断によって評価額が大きく変わる点が多くあります。申告と納税の手続きについては、次回の記事で解説します。

当事務所では、不動産の評価を含む相続税の試算や申告、生前の相続対策のご相談を承っています。お気軽にお問い合わせください。

※本記事は国税庁のパンフレット「令和8年度版_暮らしの税情報」を参考に作成しています。個別のご事情により取扱いが異なる場合があります。

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