個人で契約した生命保険の税金 ~加入から保険金受取り・解約・贈与まで~

保険税務 個人

はじめに

生命保険は、保険料を支払うとき、保険金を受け取るとき、解約するとき、契約者を変えるときのそれぞれで税金の取扱いが異なります。特に死亡保険金は、「誰が保険料を負担し、誰が受け取るか」によって、相続税・所得税・贈与税のいずれかの課税対象となります。

この記事では、個人が契約した生命保険について、加入時の生命保険料控除から、死亡保険金・満期保険金・解約返戻金・給付金を受け取ったときの税金、保険契約を贈与したときの取扱い、保険会社が税務署に提出する支払調書までを、根拠法令とあわせて解説します。

1. 生命保険の種類

個人が加入する主な生命保険は、定期保険・養老保険・終身保険の3つです。どの種類の保険かによって、「死亡保険金」「満期保険金」「解約返戻金」のいずれかを受け取る可能性があるため、生命保険にかかる税金もそれに応じて変わります。

種類 保障期間 死亡保険金 満期保険金 解約返戻金 主な税金の論点
定期保険 一定期間(10年、65歳まで等) 期間中の死亡で受取り なし ないかあっても少額(長期定期除く) 死亡保険金の課税、生命保険料控除
養老保険 一定期間 期間中の死亡で受取り あり(満期まで生存すると受取れます) あり 死亡保険金・満期保険金の課税、一時払の場合の源泉分離課税
終身保険 一生涯 亡くなると死亡保障が受け取れます なし あり(原則として年数とともに増える) 死亡保険金の課税、解約時の課税、契約者が亡くなったときの相続財産

このほか、入院や手術で給付金が出る医療保険・がん保険や、老後に年金を受け取る個人年金保険もあります。
年金形式で受け取る保険金は雑所得になりますが、相続税や贈与税の対象となった年金は、所得税がかかる部分が限られます(次の2章を参照)。

根拠:所得税法35条、所得税法施行令183条1項、185条、186条(年金形式の保険金)

2. 契約形態による死亡保険金の税金の違い

死亡保険金にかかる税金は、「保険料を負担した人」「被保険者」「受取人」の組み合わせで決まります。判定の基準は契約者の名義ではなく、実際に保険料を負担した人です。

パターン 契約者(保険料負担者) 被保険者 受取人 かかる税金
① 夫 夫 妻・子 相続税(みなし相続財産)
② 妻 夫 妻 所得税・住民税(一時所得)
③ 妻 夫 子 贈与税(妻から子への贈与)

① 相続税がかかる場合

亡くなった方が自分で保険料を負担していた場合、死亡保険金は「みなし相続財産」として相続税の対象になります。
なお、死亡保険金の受取人が相続人の場合は、次の金額まで非課税です。

  • 非課税限度額=500万円×法定相続人の数
  • 相続放棄をした人や、相続人以外の人(孫など)が受け取った場合は、非課税枠を使えません。また、配偶者・子・父母以外が受け取ると相続税額の2割加算の対象になります。

【死亡保険金を年金で受け取る場合】死亡保険金を年金形式で受け取る場合、年金を受け取る権利(年金受給権)に相続税がかかります。その年金にさらに所得税をかけると二重課税になるため、いわゆる長崎年金訴訟の最高裁判決(平成22年7月6日)を受けて取扱いが改められました。現在は、年金支給の初年の所得税は全額が非課税で、2年目以降は課税部分が階段状に増えていく方法で雑所得を計算します。確定申告では「相続等に係る生命保険契約等に基づく年金の雑所得の金額の計算書」を使います。贈与税の対象となった年金(③のパターン)も同じ取扱いです。

② 所得税(一時所得)がかかる場合

保険料を負担した人自身が死亡保険金を受け取ると、一時所得になります。給与所得などと合算して総合課税の対象となります。

一時所得の金額=保険金 - 支払った保険料 - 特別控除(最高50万円)

総所得金額には、この一時所得の金額の2分の1を加えます。保険金を年金で受け取る場合は、毎年の年金から対応する保険料を差し引いた金額が雑所得になります。

③ 贈与税がかかる場合

保険料負担者・被保険者・受取人がすべて異なる場合、受取人は保険料負担者から保険金を贈与されたものとみなされ、贈与税がかかります。贈与税は相続税の補完税であり、税率が高く設定されているため、もっとも税負担が重くなりやすい形です。

【契約者が先に亡くなった場合】契約者(保険料負担者)が夫、被保険者が妻のように、契約者と被保険者が異なる契約で契約者が先に亡くなった場合、保険金はまだ支払われません。この場合は「生命保険契約に関する権利」が相続財産になり、原則として相続開始時の解約返戻金の額で評価します(財産評価基本通達214)。生命保険の非課税枠は使えません。

根拠:相続税法3条1項1号・3号、12条1項5号、15条、18条、財産評価基本通達214(相続税)/所得税法34条、35条、所得税法施行令183条(所得税)/所得税法施行令185条、186条(相続等に係る生命保険契約等に基づく年金)/相続税法5条1項(贈与税)

3. 保険料を支払ったとき:生命保険料控除

生命保険の保険料を支払うと、「一般生命保険料」「介護医療保険料」「個人年金保険料」の3つの区分ごとに所得控除を受けられます。平成24年1月1日以後に結んだ契約(新契約)は、所得税で各区分最高4万円、合計最高12万円です。

控除額の計算(新契約・所得税)

年間の支払保険料 控除額
2万円以下 支払保険料の全額
2万円超 4万円以下 支払保険料×1/2+1万円
4万円超 8万円以下 支払保険料×1/4+2万円
8万円超 一律4万円

区分ごとの上限(新契約・所得税)

区分 対象となる保険料 所得税の上限(新契約)
一般生命保険料控除 定期保険・養老保険・終身保険など、生存または死亡に基因して支払われる保険 4万円
介護医療保険料控除 医療保険・がん保険・介護保険など、入院や通院に伴う給付部分 4万円
個人年金保険料控除 「個人年金保険料税制適格特約」が付いた個人年金保険 4万円
合計 ― 12万円

【住民税の生命保険料控除】住民税でも同じ3つの区分で控除を受けられます。新契約の上限は、各区分2万8,000円、合計7万円です。

平成23年12月31日以前に結んだ契約(旧契約)は、一般生命保険料と個人年金保険料の2区分で、所得税は各最高5万円です。新契約と旧契約の両方がある場合は、区分ごとに有利な方法を選べます(両方を合わせる場合の上限は4万円)。

【令和8年分の特例】令和8年分の所得税では、23歳未満の扶養親族がいる人の新契約の一般生命保険料控除の上限が4万円から6万円に引き上げられます(支払保険料が12万円超で上限)。ただし、3区分の合計上限は12万円のままです。

控除を受けるには、会社員は年末調整で「給与所得者の保険料控除申告書」を、個人事業主などは確定申告で保険会社から届く「生命保険料控除証明書」の内容を申告します。保険金の受取人が本人・配偶者・その他の親族であることが要件です。

根拠:所得税法76条、所得税法施行令209条(令和8年分の特例は令和7年度税制改正による租税特別措置法の規定)

4. 高度障害保険金・医療保険の給付金を受け取ったとき

病気やけがを原因として受け取る保険金・給付金は、原則として非課税です。身体の傷害に基因して支払われるものとして、所得税法で非課税とされているためです。

保険金・給付金 受取る人 税金
入院給付金・手術給付金・がん診断給付金など 被保険者本人、またはその配偶者・直系血族・生計を一にする親族 非課税
高度障害保険金・特定疾病保険金・リビングニーズ特約の保険金 同上 非課税
就業不能保険金・所得補償保険金 同上 非課税

注意点

  • 医療費控除を受ける場合、入院給付金など医療費を補てんする保険金は、支払った医療費から差し引きます(補てんされた入院の医療費を限度とします)。
  • 高度障害保険金やリビングニーズ特約の保険金を受け取った後、その保険金を使い切らないうちに本人が亡くなった場合は、残った現預金が本人の本来の相続財産になります。みなし相続財産ではないため、生命保険金の非課税枠は使えません。
  • 被保険者が亡くなった後に支払われた入院給付金などで、受取人が被保険者本人のものは、本人の未収入金として相続財産になります。

根拠:所得税法9条1項18号、所得税法施行令30条1号、所得税基本通達9-20・9-21・9-22(非課税)/所得税法73条(医療費控除)/相続税法基本通達3-7(受け取った保険金の残額)

5. 満期保険金を受け取ったとき(養老保険)

養老保険の満期保険金は、保険料を負担した人と受け取る人が同じかどうかで税金が変わります。

契約者(保険料負担者) 満期保険金受取人 税金
本人 本人 所得税・住民税(一時所得、年金で受け取る場合は雑所得)
本人 家族など他の人 贈与税

一時所得の金額は、「満期保険金+配当金 - 支払った保険料の総額 - 特別控除(最高50万円)」で計算し、その2分の1を他の所得と合算します。支払った保険料の総額が満期保険金を上回っていれば、税金はかかりません。

【一時払養老保険の場合】保険料を一時払いした養老保険で、保険期間が5年以下のものは、満期保険金の差益が一時所得ではなく、20.315%の源泉分離課税になります(次の6章を参照)。

根拠:所得税法34条、35条、所得税法施行令183条(所得税)/相続税法5条1項(贈与税)

6. 解約したときの税金と5年以内解約の源泉分離課税

解約返戻金の税金

契約者(保険料負担者)が解約して解約返戻金を受け取った場合は、一時所得になります。

  • 一時所得の金額=解約返戻金+配当金 - 支払った保険料の総額 - 特別控除(最高50万円)
  • 解約返戻金が支払った保険料より少ない(元本割れの)場合は、課税はありません。その損失を他の所得と相殺することもできません。
  • 終身保険などで長期間保険料を払い込んだ後に解約した場合は、返戻金が保険料を上回り、一時所得が生じることがあります。

5年以内に解約した場合の源泉分離課税

次の要件をすべて満たす保険は、「金融類似商品」として扱われ、差益に対して20.315%(所得税15%・復興特別所得税0.315%・住民税5%)が源泉徴収されて課税が完了します(源泉分離課税)。確定申告は不要で、一時所得の特別控除、50万円は使えません。

要件 内容
① 保険期間 保険期間が5年以下のもの、または保険期間が5年超でも契約から5年以内に解約したもの
② 保険料の払い方 一時払い(契約から1年以内に保険料総額の50%以上、または2年以内に75%以上を払い込んだ場合も含む)
③ 保障の大きさ 死亡保険金などの保障が小さいもの(災害死亡保険金が満期保険金の5倍未満、病気による死亡保険金が満期保険金以下など)

一時払養老保険など、貯蓄性の高い保険を短期で解約した場合に当てはまります。預金の利子と同じような保険であれば、預金と同じように課税するという考え方です。一方、終身保険は保険期間が一生涯で保障も大きいため、通常は対象になりません。

【解約と名義変更】契約者を変更した後に解約した場合、新しい契約者が受け取った解約返戻金のうち、以前の契約者が負担した保険料の割合に対応する部分は、以前の契約者から贈与されたものとみなされ、贈与税がかかります(7章を参照)。

根拠:所得税法34条、所得税法施行令183条2項(解約返戻金の一時所得)/所得税法174条、175条、209条の2、209条の3、所得税基本通達174-4、租税特別措置法41条の10(金融類似商品の源泉分離課税)

7. 保険契約を贈与(名義変更)したとき

親が保険料を払っていた保険の契約者を子に変えても、名義変更した時点では贈与税はかかりません。税金がかかるのは、その後に解約・満期・死亡などでお金を受け取ったときです(いわゆる「出口課税」)。

生命保険の税金は「誰が保険料を負担したか」で判定するため、名義を変えても、親が払った保険料は親の負担分として扱われます。

名義変更後に起きたこと 受け取った解約返戻金・保険金のうち、親(旧契約者)が負担した保険料の割合に対応する部分 同様に、子(新契約者)が負担した保険料の割合に対応する部分
子が解約して解約返戻金を受け取った 親から子への贈与(贈与税) 子の一時所得
子が満期保険金を受け取った 親から子への贈与(贈与税) 子の一時所得
親が亡くなった(保険は継続) 子が「生命保険契約に関する権利」を相続したものとみなされる(相続税) 課税なし

【名義変更しても税金はなくならない】名義変更は、税金がかかる時期を先に延ばすだけで、税金そのものがなくなるわけではありません。親の負担分が大きい契約を子が解約すると、多額の贈与税がかかることがあります。また、名義変更の情報は支払調書で税務署に把握されます(次の章を参照)。

根拠:相続税法5条2項、相続税法3条1項3号、相続税法基本通達3-36(国税庁質疑応答事例「生命保険契約について契約者変更があった場合」)

8. 保険会社が提出する支払調書

保険会社は、一定額を超える保険金などを支払ったとき、「支払調書」を税務署に提出します。そのため、保険金の申告漏れは税務署に把握されやすくなっています。

支払調書 提出される主な場合
生命保険金・共済金受取人別支払調書(相続税法59条1項1号) 死亡保険金の支払額が100万円を超えるとき
生命保険契約等の一時金の支払調書 満期保険金・解約返戻金などの支払額が100万円を超えるとき
生命保険契約等の年金の支払調書 年金の年間支払額が20万円を超えるとき
保険契約者等の異動に関する調書(相続税法59条2項) 契約者が亡くなったことにより契約者を変更したとき(平成30年1月1日以後)

名義変更の情報も税務署に伝わるようになりました

以前は、契約者を変更しても、その事実は支払調書に表れませんでした。そのため、親が保険料を払った契約を子に名義変更し、子が解約しても、贈与税が申告されない例がありました。

そこで平成27年度の税制改正により、平成30年1月1日以後は次のようになりました。

  • 契約者の死亡によって契約者を変更した場合は、保険金の支払がなくても「保険契約者等の異動に関する調書」が提出されます。新しい契約者、亡くなった契約者、解約返戻金相当額、亡くなった契約者が払い込んだ保険料などが記載されます。
  • 生前に名義変更した契約でも、その後に死亡保険金・満期保険金・解約返戻金を支払うときの支払調書に、「契約者変更の回数」「直前の契約者」「支払時の契約者が払い込んだ保険料」などが記載されます。

これにより、名義変更前の契約者が負担した保険料を税務署が把握できるようになり、贈与税や相続税の申告漏れが発見されやすくなっています。

根拠:相続税法59条1項1号(生命保険金・共済金受取人別支払調書)、相続税法59条2項(保険契約者等の異動に関する調書)、所得税法225条1項4号、所得税法施行規則86条(生命保険契約等の一時金・年金の支払調書)

9. 根拠法令・通達

項目 根拠法令・通達
死亡保険金の課税関係(相続税・所得税・贈与税) 相続税法3条、5条、所得税法34条、35条
死亡保険金・生命保険契約に関する権利(みなし相続財産) 相続税法3条1項1号・3号
死亡保険金の非課税限度額 相続税法12条1項5号、15条
相続税額の2割加算 相続税法18条
生命保険契約に関する権利の評価 財産評価基本通達214
一時所得(死亡保険金・満期保険金・解約返戻金) 所得税法34条、所得税法施行令183条2項
年金形式の保険金(雑所得) 所得税法35条、所得税法施行令183条1項、185条、186条
保険料負担者以外が受け取る保険金・解約返戻金(みなし贈与) 相続税法5条1項・2項
一時払養老保険等の差益の源泉分離課税(金融類似商品) 所得税法174条、175条、209条の2、209条の3、所得税基本通達174-4、租税特別措置法41条の10
高度障害保険金・医療保険の給付金・所得補償保険金の非課税 所得税法9条1項18号、所得税法施行令30条1号、所得税基本通達9-20・9-21・9-22
リビングニーズ特約の保険金の残額(相続財産) 相続税法基本通達3-7
医療費控除での保険金の差引き 所得税法73条
生命保険料控除 所得税法76条、所得税法施行令209条
令和8年分の生命保険料控除の特例(23歳未満の扶養親族) 租税特別措置法(令和7年度税制改正)
契約者変更(名義変更)時の課税関係 相続税法5条2項、相続税法基本通達3-36
生命保険金・共済金受取人別支払調書 相続税法59条1項1号
保険契約者等の異動に関する調書 相続税法59条2項
生命保険契約等の一時金・年金の支払調書 所得税法225条1項4号、所得税法施行規則86条

参考(国税庁)

10. まとめ

  • 死亡保険金は、保険料負担者・被保険者・受取人の組み合わせにより、相続税・所得税(一時所得)・贈与税のいずれかがかかります。
  • 保険料を支払うと、所得税・住民税で生命保険料控除を受けられます(生命保険料控除は一般・介護医療・個人年金の3区分で、所得税の合計は最高12万円)。
  • 高度障害保険金や入院給付金などは、本人や家族が受け取れば非課税です。
  • 満期保険金や解約返戻金は、保険料を負担した本人が受け取れば一時所得です。一時払養老保険などを5年以内に解約した場合は、20.315%の源泉分離課税になります。
  • 保険契約の名義変更では課税されませんが、その後の解約・満期・死亡のときに、名義変更前の契約者の負担分に贈与税や相続税がかかります。
  • 平成30年からは、名義変更の情報も支払調書で税務署に伝わるようになっています。

当事務所では、生命保険の契約形態の確認や、保険金を受け取ったときの確定申告・贈与税申告・相続税申告をサポートしております。名義変更や解約を検討されている方も、税金への影響を踏まえてお気軽にご相談ください。

※本記事は、令和8年10月現在の法令等に基づいて作成しています。個別のご事情により取扱いが異なる場合があります。

関連記事

  1. 相続

    相続が発生した後の遺産にかかる手続きの流れ ~3か月・4か月・1…

  2. 医療費控除について

  3. 確定申告について

  4. 医療費控除について(その2)

  5. 小規模宅地の特例

    小規模宅地等の特例「家なき子特例」とは?

  6. 税額控除

    相続税の税額控除とは? ~配偶者の税額軽減・未成年者控除・障害者…

  7. 1日入院しただけで100万円もらえる医療保険

  8. 国税庁が公表した確定申告で間違いやすい12の事例

PAGE TOP
目次