生命保険契約照会制度とは ~亡くなった方の生命保険を調べる方法~

はじめに
相続が発生したとき、亡くなった方がどの生命保険会社と契約していたのかわからない、ということは珍しくありません。保険証券が見つからない、保険料が口座振替ではなく給与天引きだった、家族に話していなかった、といった理由で、受け取れるはずの死亡保険金が請求されないままになることもあります。
こうした場合に役立つのが、一般社団法人生命保険協会が運営する「生命保険契約照会制度」です。1回の手続きで、国内の生命保険会社全社(協会加盟の42社)に対して、亡くなった方が契約者または被保険者となっている生命保険契約があるかどうかをまとめて調べることができます。
この記事では、制度の概要、照会できる人、手続きの流れと費用、相続税申告での活用方法を解説します。あわせて、税理士は照会手続きの任意代理人になれないという実務上の注意点もお伝えします。
1. 生命保険契約照会制度の概要
生命保険契約照会制度は、照会者からの申出を受けて、生命保険協会が加盟する生命保険会社全社に契約の有無を一括で照会し、結果を取りまとめて回答する仕組みです。高齢者が独居のまま亡くなるケースや認知症の方の増加を踏まえ、保険金等の確実な支払いを目的としています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 運営 | 一般社団法人生命保険協会 |
| 照会先 | 協会加盟の生命保険会社全社(42社) |
| 調べられること | 照会対象者が契約者または被保険者となっている生命保険契約の有無 |
| 申込方法 | オンライン(生命保険契約照会システム)または郵送 |
| 利用料 | 1回の照会につきWEB申請6,000円(書面申請は7,000円)、災害救助法適用の災害の場合には無料 |
| 回答までの期間 | 利用料の支払いから14営業日(3週間程度) |
制度を利用できる3つの場面
| 場面 | 内容 |
|---|---|
| A 亡くなった場合 | 契約者または被保険者が亡くなったとき。相続で主に使うのはこのケースです |
| B 認知判断能力が低下した場合 | 契約者または被保険者が認知症等で判断能力が低下したとき(成年後見人や任意後見人、3親等内の親族などが照会) |
| C 災害時 | 災害救助法が適用された地域で被災し、契約者または被保険者が死亡・行方不明になったとき(利用料無料、電話で受付) |
【まずはご家族で探しましょう】制度を利用する前に、①保険証券がないか、②保険会社から届いた通知物(契約内容のお知らせ、生命保険料控除証明書など)がないか、③預金通帳に保険料の口座振替の履歴がないかを確認しましょう。保険会社が特定できれば、その会社に直接問い合わせる方が早く、費用もかかりません。
2. 照会できる人(亡くなった場合)
亡くなった方の契約を調べられるのは、法定相続人とその代理人、遺言執行者などに限られます。個人情報保護の観点から、照会者の範囲と必要書類が厳格に定められています。
| 照会者 | 主な必要書類 |
|---|---|
| 法定相続人(配偶者・子など) | 本人確認書類、法定相続人であることがわかる書類(法定相続情報一覧図または戸籍等)、死亡が確認できる書類 |
| 法定相続人の任意代理人(弁護士・司法書士・行政書士) | 上記に加え、代理人の資格を証明する書類、相続人が記入した委任状 |
| 法定相続人の法定代理人(成年後見人等) | 上記に加え、登記事項証明書など法定代理権の確認書類 |
| 遺言執行者 | 本人確認書類、印鑑登録証明書、遺言者の除籍全部事項証明書、遺言書 |
| 遺言執行者の任意代理人(弁護士・司法書士・行政書士) | 上記に加え、代理人の資格を証明する書類、遺言執行者が記入した委任状 |
税理士は任意代理人になれません
生命保険協会の手引きでは、任意代理人は「対象者の財産管理を適切に行うために生命保険契約の有無を照会するにふさわしいと本会が認めた者」として、弁護士、司法書士、行政書士に限るとされています。なお、弁護士法人・司法書士法人・行政書士法人も代理人になれます。
つまり、税理士は、相続税の申告を依頼されていても、相続人に代わってこの制度で照会することはできません。
税理士に相続税申告を依頼している場合も、照会は相続人ご自身が行うか、弁護士・司法書士・行政書士に依頼する必要があります。
税理士が行政書士の資格も持っている場合は、行政書士として任意代理人になることができます。その場合は行政書士の資格を証明する書類を提出します。
相続人が複数いる場合
- 手続きは「照会代表者」1名が行います。他の相続人も照会者に加わる場合は、人数分の「生命保険契約照会依頼 委任状 兼 同意書(ウェブ用様式)」と戸籍等を提出します。
1回の照会で委任者は9名までです。 - 契約の有無の回答は照会者全員で同じで、異なるのは「死亡保険金の請求権の有無」だけです。契約の有無を知るだけなら、照会代表者のみの手続きで十分です。
- 回答は照会代表者にまとめて行われるため、他の照会者の回答内容も代表者に知られます。知られたくない場合は、別途ご自身で照会します。
必要書類のポイント
- 法定相続人であることの証明は、法務局の認証を受けた「法定相続情報一覧図」が原則です。一覧図には死亡日も記載されるため、死亡診断書などは不要になります。自作の「相続関係図」は不可です。
- 戸籍で代用する場合、兄弟姉妹や甥姪が照会するときは、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍などが必要です。照会者の欄に「除籍」とある戸籍は使えません。
- 戸籍や住民票は、本籍・従前戸籍などを黒塗りして提出します。マイナンバーカードは表面のみ提出します。
3. 照会でわかること・わからないこと
回答されるのは「どの保険会社に契約があるか」と、照会者ごとの「死亡保険金の請求権の有無」です。保険の種類や金額はわからず、保険金の請求を代行してもらえるわけでもありません。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| わかること | 契約の有無と保険会社名、照会者ごとの死亡保険金の請求権の有無 |
| わからないこと | 保険の種類、保険金額、受取人などの契約内容(協会は個々の契約内容を把握していません) |
| 調査対象の契約 | 照会受付日現在、有効に継続している個人保険契約。死亡による照会の場合は、死亡日まで最低3年間さかのぼって調査 |
| 対象外の契約 | 死亡保険金支払済・解約済・失効の契約、財形保険・財形年金保険、支払が始まった年金保険、保険金等が据置きになっている保険 |
契約が見つかった場合は、その保険会社に直接問い合わせて契約内容を確認し、請求手続きを進めます。その際、「生命保険契約照会制度を利用した」と伝えるとスムーズです。
【請求権がない場合もあります】契約が存在しても、照会者に請求の権利がないことがあります(受取人が別の方になっている場合など)。その場合は、契約上の正当な権利者から問い合わせる必要があります。
4. 手続きの流れと費用(Web申請の場合)
Webで申請する場合、書類に不備がなければ、利用料の支払いから約14営業日(3週間程度)で結果が届きます。
- ユーザー登録・マイページ作成:生命保険協会のホームページから「生命保険契約照会システム」に進み、照会代表者がユーザー登録をしてマイページを作ります。「@seiho.or.jp」からのメールを受信できるようにしておきます。
- 申請書類のアップロード:マイページからウェブ用様式などをダウンロードし、記入して、本人確認書類や戸籍等とともにアップロードします。
- 不備の修正:書類に不備があるとメールで修正依頼が届きます。不備が解消するまで次に進めません。
- 利用料の支払い:書類が受け付けられると支払依頼のメールが届きます。利用料6,000円をクレジットカードまたはコンビニで支払います。支払いの確認後、協会から全社に調査が依頼されます。
- 照会結果の受取り:全社の回答がそろうと、結果通知のPDFがマイページに掲載され、メールで知らせが届きます。iPhoneのSafariでは表示できないことがあるため、パソコンでの閲覧が推奨されています。
| 費用 | 金額 |
|---|---|
| 利用料(亡くなった場合・認知判断能力が低下した場合) | 1回の照会につき6,000円 |
| 利用料(災害による死亡・行方不明の場合) | 無料 |
| 戸籍や診断書などの取得費用 | 照会者の自己負担 |
書類の不足や不備(特に戸籍)が多く見られ、再提出になると回答まで時間がかかります。法定相続情報一覧図を取得してから申請すると、手続きがスムーズです。また、制度を利用できないことが判明した場合も、戸籍などの取得費用は戻りません。
5. 相続税申告での活用と注意点
生命保険は、受け取る保険金だけでなく、まだ保険金が支払われていない契約も相続税の課税対象になることがあります。照会制度は「亡くなった方が契約者または被保険者の契約」を調べられるため、財産の申告漏れを防ぐのに役立ちます。
| 契約の形 | 相続税の取扱い |
|---|---|
| 被保険者=亡くなった方、保険料負担者=亡くなった方 | 死亡保険金はみなし相続財産。相続人が受け取る場合は「500万円×法定相続人の数」まで非課税 |
| 契約者(保険料負担者)=亡くなった方、被保険者=家族など | 保険金はまだ支払われませんが、「生命保険契約に関する権利」として相続財産になります(原則として相続開始時の解約返戻金の額で評価) |
注意点
- 早めに照会する:書類の準備から回答までは1か月以上かかることもあります。その後、各保険会社への問い合わせや評価が必要なため、相続税の申告期限(相続開始を知った日の翌日から10か月以内)から逆算して早めに着手しましょう。
- 相続放棄の判断にも:借金が多く相続放棄を検討している場合も、死亡保険金は受取人固有の財産ですので、相続放棄をしても生命保険金を受け取ることが可能ということになります。照会で契約の有無を把握しておくと、判断の材料になります。
- 請求の時効に注意:保険金を請求する権利は、行使できる時から3年で時効になります(保険法)。
- 申告後に見つかった場合:相続税の申告後に契約が見つかった場合は、修正申告が必要になることがあります。税務署は保険会社から支払調書を受け取っているため、申告漏れは把握されやすい財産です。
6. 根拠法令・参考資料
| 項目 | 根拠・出典 |
|---|---|
| 照会者の範囲、任意代理人の範囲(弁護士・司法書士・行政書士)、必要書類、利用料、留意点 | 生命保険協会「生命保険契約照会制度 ご利用の手引き(WEB手続用)」(2026年6月1日版)、生命保険契約照会制度利用規約 |
| 死亡保険金(みなし相続財産) | 相続税法3条1項1号 |
| 死亡保険金の非課税限度額 | 相続税法12条1項5号 |
| 生命保険契約に関する権利の評価 | 財産評価基本通達214 |
| 保険会社の支払調書の提出 | 相続税法59条 |
| 相続税の申告期限(10か月) | 相続税法27条 |
| 保険金請求権の消滅時効(3年) | 保険法95条 |
| 法定相続情報一覧図 | 不動産登記規則247条(法定相続情報証明制度) |
参考
7. まとめ
- 生命保険契約照会制度を使うと、生命保険協会を通じて、加盟する生命保険会社全社(42社)に契約の有無を一括で照会できます。
- 利用料はWeb申請の場合は1回6,000円で、支払いから約14営業日(3週間程度)で回答が届きます。
- わかるのは契約の有無と請求権の有無で、契約内容は各保険会社に直接確認します。
- 照会できるのは法定相続人、遺言執行者などで、任意代理人は弁護士・司法書士・行政書士に限られます。税理士は任意代理人になれません。
- 亡くなった方が契約者の保険は、保険金が支払われなくても相続財産になるため、相続税申告の前に早めに確認しましょう。
当事務所(税理士・行政書士)では、相続税の申告にあたって、生命保険を含む相続財産の調査を行っております。
代表税理士は行政書士として、法定相続人の任意代理人となり、生命保険契約照会制度の手続きを代わりに行うことも可能です。お気軽にご相談ください。
※本記事は、生命保険協会の公表資料(2026年6月1日版の手引き等)を参考に作成しています。
制度の内容は変更される場合がありますので、ご利用の際は協会のホームページで最新の情報をご確認ください。








