遺言の種類と作り方 ~自筆証書遺言の保管制度・デジタル遺言・公正証書遺言~

遺言書

はじめに

遺言は、自分の財産を誰にどのように残すかを決めておくためのものです。有効な遺言があれば、原則として遺言の内容が法定相続分より優先され、相続人同士の話し合い(遺産分割協議)をしなくても相続手続きを進められます。

一方で、遺言は法律で決められた方式で作らないと無効になります。また、令和8年6月に民法が改正され、パソコンなどで作成できる「保管証書遺言(デジタル遺言)」が新たに設けられることになりました。

この記事では、遺言の種類と家庭裁判所の検認、遺産分割との関係、遺留分、自筆証書遺言の法務局保管制度、新しいデジタル遺言、公正証書遺言の手続きと費用を、根拠法令とあわせて解説します。

1. 遺言の種類

普段の生活で作る遺言(普通方式)には、現在、自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言の3種類があります。令和8年の民法改正により、今後これに「保管証書遺言(デジタル遺言)」が加わります。遺言は15歳以上であれば作成できます。

項目 自筆証書遺言 自筆証書遺言(法務局保管) 公正証書遺言 秘密証書遺言
作成方法 全文・日付・氏名を自書して押印(財産目録はパソコン等も可) 自筆証書遺言を法務局に預ける 公証人が作成 自分で作成して封印し、公証人に存在を証明してもらう
証人 不要 不要 2人以上 2人以上
費用 ほぼ不要 保管手数料3,900円 財産額に応じた公証人手数料 定額の公証人手数料
保管 自分で保管(紛失・改ざんのおそれ) 法務局(原本は遺言者の死亡後50年、データは150年) 公証役場 自分で保管
家庭裁判所の検認 必要 不要 不要 必要
形式不備で無効になるリスク 高い 外形的な形式は法務局が確認(内容は確認しない) 低い 高い

【押印は不要に】令和8年の民法改正で、自筆証書遺言や秘密証書遺言の押印要件が廃止され、押印は任意になります。施行は公布(令和8年6月24日)から1年以内の政令で定める日です。施行までは、これまでどおり押印が必要です。

このほか、病気などで死亡の危急が迫ったときなどに作る「特別方式」の遺言もあります。

1-2. 家庭裁判所の「検認」とは ~自筆証書遺言は必要、法務局保管なら不要~

自宅などで保管していた自筆証書遺言は、相続が始まった後、そのまま相続手続きに使うことはできません。まず家庭裁判所で「検認」という手続きを受ける必要があります(民法1004条1項)。

検認の目的

検認は、相続人に遺言書があることとその内容を知らせるとともに、検認の日における遺言書の状態(形状、書き加えや訂正の状態、日付、署名など)を家庭裁判所が記録し、その後の偽造・変造を防ぐための手続きです。遺言が有効か無効かを判断する手続きではありません。 検認を受けても無効な遺言が有効になるわけではなく、逆に検認を受けなかったからといって遺言が無効になるわけでもありません。

検認の手続き

項目 内容
申立てをする人 遺言書を保管している人、または遺言書を発見した相続人
申立先 遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所
申立ての時期 相続の開始を知った後、遅滞なく
主な必要書類 申立書、遺言者の出生から死亡までのすべての戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本など
費用 遺言書1通につき収入印紙800円、連絡用の郵便切手
検認期日 家庭裁判所から相続人全員に期日が通知されます。申立人以外の相続人の出席は任意です
検認後 「検認済証明書」(遺言書1通につき収入印紙150円)の付いた遺言書で、相続登記や預金の解約などを行います

【封のある遺言書は開けないで】封印のある遺言書は、家庭裁判所で相続人等の立会いのもとで開封しなければなりません(民法1004条3項)。検認を経ずに遺言を執行したり、家庭裁判所外で開封したりすると、5万円以下の過料に処される場合があります(民法1005条)。

申立てから検認期日までは1か月程度かかることが多く、戸籍の収集を含めると、相続手続きに着手できるまで2か月前後かかることもあります。この間、不動産の名義変更や預金の解約は進められません。

検認が必要な遺言・不要な遺言

遺言の種類 検認 理由
自筆証書遺言(自宅などで保管) 必要 本人以外が保管しており、偽造・変造のおそれがあるため
秘密証書遺言 必要 自分で保管するため
自筆証書遺言(法務局で保管) 不要(遺言書保管法11条) 預けるときに法務局が本人確認と外形的な形式の確認を行い、原本と画像データを法務局が保管するため、相続開始後に偽造・変造されるおそれがないため
公正証書遺言 不要(民法1004条2項) 原本を公証役場が保管しているため
保管証書遺言(デジタル遺言) 不要(改正法施行後) 法務局が保管するため

法務局に預けた自筆証書遺言の場合、相続人は全国どの遺言書保管所でも「遺言書情報証明書」の交付を受けられ、これを検認済みの遺言書の代わりとして、すぐに相続登記や預金の解約などの手続きに使えます。同じ自筆証書遺言でも、法務局に預けるかどうかで、相続人の負担が大きく変わります。

法務局に預けたのとは別に、自宅などに保管していた自筆の遺言書が見つかった場合は、その遺言書については検認が必要です。

2. 遺言と遺産分割の関係

有効な遺言がある場合は、原則として遺言の内容が法定相続分より優先されます。ただし、相続人全員が同意すれば、遺言と異なる内容で遺産分割することもできます。

ケース 遺産分割協議
遺言がない 必要。相続人全員で分け方を決めます(まとまらなければ家庭裁判所の調停・審判)。
遺言ですべての財産の取得者が決まっている 不要。遺言に基づいて名義変更や相続税の申告を行います。
遺言に書かれていない財産がある その財産については、相続人全員での協議が必要です。
相続人全員が遺言と異なる分け方を希望している 全員の合意があれば、遺言と異なる内容で遺産分割できます。

遺言と異なる遺産分割をする場合の注意点

  • 相続人全員の合意が必要です。相続人以外の受遺者がいる場合はその人の同意も必要で、遺言執行者がいる場合は、その同意も得ておくのが一般的です。
  • 遺言で一定期間の遺産分割が禁止されている場合は、その期間は分割できません。
  • 税務上は、相続人全員の協議で遺言と異なる分割をした場合、各人の相続税の課税価格はその分割の内容によります。受遺者が遺贈を事実上放棄し、相続人間で分割が行われたものと扱われるため、贈与税は課されません(国税庁タックスアンサー No.4176)。
  • いったん遺言どおりに名義変更した後に財産を移すと、贈与とされるおそれがあります。遺言と異なる分割をする場合は、名義変更の前に協議をまとめましょう。

3. 遺留分 ~遺言でも奪えない最低限の取り分~

遺言は原則として自由に内容を決められますが、一定の相続人には、遺言によっても奪うことのできない最低限の取り分が法律で保障されています。これを「遺留分(いりゅうぶん)」といいます(民法1042条)。遺言を作るときも、遺言と異なる遺産分割を検討するときも、遺留分を踏まえておくことが大切です。

3-1. 遺留分がある人

遺留分があるのは、配偶者、子(代襲相続人である孫などを含む)、直系尊属(父母・祖父母)のみです。一方、兄弟姉妹(甥・姪)には遺留分がありません。

そのため、子のいない夫婦で「配偶者に全財産を相続させる」という遺言を作っておけば、兄弟姉妹から遺留分を請求されることはありません。遺言を作る効果が特に大きいケースです。

3-2. 遺留分の割合

相続人全体の遺留分は、相続人が直系尊属だけの場合は遺留分算定の基礎となる財産の3分の1、それ以外の場合は2分の1です。これに各相続人の法定相続分を掛けたものが、各人の遺留分になります。

相続人の構成 各人の遺留分
配偶者のみ 配偶者 1/2
配偶者と子 配偶者 1/4、子 全員で1/4(人数で均等)
子のみ 子 全員で1/2(人数で均等)
配偶者と直系尊属 配偶者 1/3、直系尊属 全員で1/6
直系尊属のみ 直系尊属 全員で1/3
配偶者と兄弟姉妹 配偶者 1/2、兄弟姉妹 なし
兄弟姉妹のみ なし

3-3. 遺留分算定の基礎となる財産

遺留分は、相続開始時の財産だけでなく、一定の生前贈与も加えて計算します(民法1043条、1044条)。

遺留分算定の基礎となる財産 = 相続開始時の財産(時価) + 一定の生前贈与 - 債務

加算する生前贈与 対象期間
相続人以外の人への贈与 相続開始前1年以内
相続人への贈与(婚姻・養子縁組のため、または生計の資本としての贈与=特別受益) 相続開始前10年以内
贈与者・受贈者の双方が、遺留分権利者に損害を与えることを知って行った贈与 期間の制限なし

死亡保険金は受取人固有の財産のため、原則として遺留分算定の基礎には含まれないと解されています。ただし、遺産総額に比べて保険金が著しく大きいなどの事情がある場合は、特別受益に準じて扱われる可能性があります。

3-4. 計算例

遺産1億円(債務・生前贈与なし)、相続人は配偶者・長男・長女の3人。遺言で「全財産を長男に相続させる」とした場合

相続人 遺留分の計算 遺留分の額
配偶者 1億円 × 1/2 × 1/2(法定相続分) 2,500万円
長女 1億円 × 1/2 × 1/4(法定相続分) 1,250万円

配偶者と長女は、長男に対して、それぞれ上記の金額(合計3,750万円)を請求することができます。

3-5. 遺留分侵害額請求

  • 遺留分を侵害された相続人は、多く財産を取得した受遺者や受贈者に対して、侵害額に相当する金銭の支払いを請求できます(民法1046条)。請求できるのは金銭のみで、不動産などの財産そのものの返還を求めることはできません(下記「遺留分減殺請求からの改正」参照)。
  • 遺留分を侵害する遺言も無効にはなりません。遺留分は、請求して初めて取り戻せる権利です。
  • 請求は意思表示で足りますが、後日の証拠のため内容証明郵便で行うのが一般的です。話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所の調停や訴訟で解決を図ります。
  • 期限:相続の開始と、遺留分を侵害する贈与・遺贈があったことを知った時から1年、または相続開始から10年を経過すると請求できなくなります(民法1048条)。
  • 請求を受けた人がすぐに金銭を用意できない場合は、裁判所に支払期限の猶予を求めることができます(民法1047条5項)。

遺留分減殺請求からの改正(現物返還から金銭支払いへ)

平成30年の民法(相続法)改正により、令和元年7月1日から、従来の「遺留分減殺請求」が「遺留分侵害額請求」に改められ、遺留分の取り戻し方が「財産そのものの返還」から「金銭の支払い」に変わりました。

項目 改正前:遺留分減殺請求 改正後:遺留分侵害額請求
対象となる相続 令和元年6月30日以前に開始した相続 令和元年7月1日以後に開始した相続
請求の効果 遺贈・贈与が侵害の限度で効力を失い、財産そのもの(持分)が請求者に戻る 侵害額に相当する金銭の支払いを求める権利(金銭債権)が生じる
返還の方法 現物返還が原則(受遺者等が価額弁償を選べば金銭でも可) 金銭での支払いのみ(財産の返還は求められない)
不動産・自社株への影響 請求者と受遺者の共有状態になり、売却や活用、事業承継の支障になりやすい 共有にならず、遺言どおり取得者の単独所有のまま維持できる
支払い側の負担 ― 支払資金の準備が必要。すぐに用意できなければ裁判所に期限の猶予を求められる

改正の目的は、遺留分をめぐる争いで不動産や自社株が共有になり、管理や事業承継が進まなくなる問題を解消し、遺言者の意思を尊重することにあります。ただしその反面、多く取得した人は現金で支払う必要があるため、不動産や自社株のように換金しにくい財産を取得させる遺言では、支払い原資の準備が重要になりました(3-8参照)。

【税務上の違いにも注意】改正後は金銭での支払いが原則のため、当事者の合意により金銭の代わりに不動産などで支払うと「代物弁済」となり、支払った人に譲渡所得の課税が生じます(3-7参照)。改正前の減殺請求による現物返還とは税務上の扱いが異なるため、従前の感覚で不動産を渡すと思わぬ課税を受けることがあります。

3-6. 遺留分の放棄

遺留分は、相続開始前でも放棄できますが、その場合は家庭裁判所の許可が必要です(民法1049条1項)。相続開始後は自由に放棄できます。遺留分を放棄しても相続人であることに変わりはなく、「相続放棄」とは別の手続きです。

3-7. 税務上の取扱い

  • 遺留分侵害額請求により金銭を受け取った人はその金額を相続税の課税価格に加え、支払った人は課税価格から差し引きます。
    すでに相続税の申告をしている場合、支払った人は、支払額が確定したことを知った日の翌日から4か月以内に更正の請求ができ(相続税法32条1項3号)、受け取った人は修正申告または期限後申告を行います(相続税法30条、31条)。
  • 金銭の代わりに不動産や株式などで支払った場合は、支払った人がその資産を時価で譲渡したものとされ、譲渡所得の課税対象になります(所得税基本通達33-1の6)。

3-8. 遺言を作るときの対策

  • できるだけ遺留分を侵害しない分け方を基本にします。
  • 侵害する分け方にする場合は、多く取得する人が遺留分侵害額を支払えるよう、生命保険(受取人をその人にする)などで支払い原資を準備しておきます。
  • 遺言に「付言事項」として、そのような分け方にした理由や家族への想いを書いておくと、争いの予防に役立ちます(付言事項に法的な効力はありません)。
  • 必要に応じて、生前に家庭裁判所の許可を得て遺留分を放棄してもらう方法もあります。

4. 自筆証書遺言の法務局保管制度

自筆証書遺言は手軽に作れる反面、紛失や改ざん、相続人に見つけてもらえないといった心配があります。
これを解消するため、令和2年7月10日から、自筆証書遺言を法務局(遺言書保管所)で預かってもらえる「自筆証書遺言書保管制度」が始まっています。

制度のメリット

  • 法務局が原本と画像データを保管するので、紛失・改ざんのおそれがありません。
  • 預けるときに、日付・署名などの外形的な形式を法務局が確認してくれます(遺言の内容や有効性の相談には応じてもらえません)。
  • 相続開始後、家庭裁判所の検認が不要です。法務局が原本を保管しているため偽造・変造のおそれがなく、相続人は検認を待たずに「遺言書情報証明書」で相続登記や預金の解約を進められます(1-2参照)。
  • 遺言者が亡くなったことを法務局が確認すると、あらかじめ指定した人(3人まで)に遺言書が預けられていることを通知してくれます(指定者通知)。
  • 相続人の誰かが遺言書を閲覧したり証明書を取得したりすると、他の相続人にも通知されます(関係遺言書保管通知)。

利用の流れ

  1. 遺言書を作る:A4サイズ、片面のみ、所定の余白(上5mm・下10mm・左20mm・右5mm以上)をとるなど、法務局の様式のルールに従います。封筒には入れず、ホチキスでも綴じません。
  2. 保管先を決めて予約する:遺言者の住所地・本籍地・所有する不動産の所在地のいずれかを管轄する遺言書保管所に、予約して出向きます。
  3. 本人が出向いて申請する:遺言者本人が出向く必要があり、代理人による申請はできません。申請書、本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証など)、本籍の記載された住民票の写しなどを持参します。
  4. 保管証を受け取る:保管番号が記載された保管証が交付されます。家族に保管していることを伝えておくと安心です。

預けた後も、本人はいつでも遺言書を閲覧したり、保管を撤回して返してもらったりできます。

手数料(収入印紙で納付)

手続き 手数料
遺言書の保管の申請 1通につき3,900円
遺言書の閲覧(モニター) 1回につき1,400円
遺言書の閲覧(原本) 1回につき1,700円
遺言書情報証明書の交付 1通につき1,400円
遺言書保管事実証明書の交付 1通につき800円

相続開始後の手続き

相続人は、全国どの遺言書保管所でも「遺言書情報証明書」の交付を請求できます。この証明書は、不動産の相続登記や預金の名義変更に使えます。

【内容の有効性は保証されない】法務局が確認するのは外形的な形式だけです。財産の特定があいまいだったり、遺留分を大きく侵害していたりしても、預けることはできます。内容に不安がある場合は、専門家に相談するか、公正証書遺言を検討しましょう。

5. 今後始まる保管証書遺言(デジタル遺言)

令和8年6月17日に「民法等の一部を改正する法律」(令和8年法律第45号、同年6月24日公布)が成立し、パソコンなどで作成した遺言を法務局で保管する「保管証書遺言(デジタル遺言)」が新たな遺言の方式として設けられました。

保管証書遺言(デジタル遺言)のポイント

  • 作成方法:パソコンなどで作成した遺言のデータ、またはそれを印刷したものを法務局に提供します。全文を手書きする必要はありません。
  • 本人の口述:遺言者本人が、法務局で対面で、またはウェブ会議を利用して、遺言の全文を口述します。
  • 本人確認:法務局の遺言書保管官が本人確認を行い、偽造を防ぎます。
  • オンライン申請:申請はオンラインでも行える仕組みとされています。
  • 証人・検認:証人は不要で、相続開始後の家庭裁判所の検認も不要です。相続人は法務局に証明書の交付を請求できます。

いつから使えるか

改正内容 施行日
自筆証書遺言などの押印の任意化 公布から1年を超えない範囲で政令で定める日
保管証書遺言(デジタル遺言)の創設 公布から3年を超えない範囲で政令で定める日(システム整備が必要なため)

現時点(令和8年10月)では、保管証書遺言(デジタル遺言)はまだ利用できません。具体的な開始日や手数料は、今後政令などで定められます。
それまでに遺言を残したい場合は、自筆証書遺言(法務局保管)か公正証書遺言を利用しましょう。

【その他の改正点】病気などで死亡の危急が迫ったときの「死亡危急時遺言」など特別方式の遺言でも、パソコンでの作成やウェブ会議による証人の立会いが認められ、必要な証人の数も減らされます。

6. 公正証書遺言の手続き方法

公正証書遺言は、遺言者が公証人に遺言の内容を伝え、公証人がそれを文書にまとめて作成する遺言です。原本は公証役場で保管されるため、紛失・改ざんのおそれがなく、家庭裁判所の検認も不要です。方式の不備で無効になるリスクが最も低い方法といえます。

6-1. 作成の流れ

ステップ 内容
① 内容の検討 誰にどの財産を相続させる(遺贈する)か、遺言執行者を誰にするかなどを整理します。遺留分や相続税への影響もこの段階で確認しておくと安心です。
② 公証役場へ相談・予約 全国どこの公証役場でも作成できます。電話・メール等で相談し、遺言の案(メモ)と必要書類を事前に送ります。
③ 必要書類の準備 下記6-2の書類をそろえます。
④ 公証人が文案を作成 公証人が遺言書の案を作成し、遺言者が内容を確認・修正します。この段階で手数料の額も確定します。
⑤ 作成当日 遺言者と証人2人が公証役場に出向き、公証人が遺言の内容を読み聞かせ(または閲覧させ)、遺言者・証人が内容の正確なことを確認したうえで署名し、公証人が署名して完成します(民法969条)。
⑥ 正本・謄本の受領 原本は公証役場に保管され、遺言者には正本・謄本が交付されます。手数料はこのときに支払います。

病気などで公証役場へ出向けない場合は、公証人に自宅・病院・老人ホーム等へ出張してもらうことができます(手数料が加算されます)。また、口がきけない方・耳が聞こえない方も、通訳や筆談により作成できます(民法969条の2)。

6-2. 主な必要書類

書類 備考
遺言者の本人確認資料 印鑑登録証明書(発行後3か月以内)と実印、または運転免許証・マイナンバーカード等の顔写真付き身分証明書
遺言者と相続人の続柄がわかる戸籍謄本 相続人に財産を相続させる場合
受遺者の住民票 相続人以外の人に遺贈する場合(法人の場合は登記事項証明書)
不動産の登記事項証明書・固定資産評価証明書(または課税明細書) 不動産がある場合。評価証明書は手数料の計算にも使います
預貯金・有価証券等の資料 通帳の写しや残高のメモなど
証人の氏名・住所・生年月日・職業のメモ 証人を自分で手配する場合
遺言執行者の住所・氏名等のメモ 相続人・受遺者以外の人を指定する場合

※必要書類は公証役場や遺言の内容によって異なりますので、事前に作成予定の公証役場へご確認ください。

6-3. 証人2人が必要

公正証書遺言の作成には、証人2人以上の立会いが必要です(民法969条1号)。
証人は、遺言者本人であること、遺言者が自分の意思で内容を伝えていることを確認する役割を担います。

ただし、次の人は証人になることができません(民法974条)。

証人になれない人 理由
未成年者 判断能力の観点から
推定相続人・受遺者、およびその配偶者と直系血族 遺言の内容に利害関係があるため
公証人の配偶者、4親等内の親族、書記および使用人 公証人から独立した立場を確保するため

配偶者や子は推定相続人にあたるため、証人にはなれません。適当な証人が見つからない場合は、公証役場に証人を紹介してもらうこともできます(証人への謝礼が必要です)。また、遺言執行者に指定する税理士・弁護士等の専門家に証人をお願いするケースもよくあります。

6-4. 費用(公証人手数料)

公証人手数料は「公証人手数料令」で定められており、令和7年10月1日から改定されています。手数料は、遺言によって財産を受け取る人ごとに、その人が受け取る財産の価額に応じて計算し、それを合計します。

目的の価額(受け取る人ごと) 手数料
50万円以下 3,000円
50万円超 100万円以下 5,000円
100万円超 200万円以下 7,000円
200万円超 500万円以下 13,000円
500万円超 1,000万円以下 20,000円
1,000万円超 3,000万円以下 26,000円
3,000万円超 5,000万円以下 33,000円
5,000万円超 1億円以下 49,000円
1億円超 3億円以下 49,000円+超過額5,000万円までごとに15,000円
3億円超 10億円以下 109,000円+超過額5,000万円までごとに13,000円
10億円超 291,000円+超過額5,000万円までごとに9,000円

このほか、次の費用がかかります。

項目 内容
遺言加算 遺言全体の財産の価額が1億円以下の場合、13,000円を加算
正本・謄本の交付 紙の場合は1枚につき300円、電子データの場合は1件につき2,500円
出張の場合 手数料が5割増しになるほか、公証人の日当と交通費(実費)
証人の謝礼 公証役場に紹介を依頼した場合など

【計算例】 財産1億円を、妻に6,000万円、長男に4,000万円相続させる遺言の場合

項目 金額
妻分(6,000万円:5,000万円超1億円以下) 49,000円
長男分(4,000万円:3,000万円超5,000万円以下) 33,000円
遺言加算(全体1億円以下) 13,000円
合計 95,000円(+正本・謄本代等)

財産の価額は、不動産は固定資産税評価額などをもとに算定されます。正確な手数料は公証人が文案作成時に計算しますので、事前に確認しておきましょう。

6-5. 公正証書のデジタル化

公証人法の改正により、令和7年10月1日から公正証書の作成手続がデジタル化され、原本が原則として電子データで作成・保存されるようになりました。また、遺言者が希望し、公証人が相当と認める場合には、ウェブ会議を利用して公証役場に出向かずに作成することも可能とされています(遺言の場合は本人の真意確認の観点から慎重に判断されます)。

6-6. 遺言の有無を調べるには

平成元年以降に作成された公正証書遺言は、日本公証人連合会の遺言検索システムに登録されています。相続人等の利害関係人は、遺言者の死亡後、全国どこの公証役場からでも遺言の有無を照会でき、遺言があれば作成した公証役場で謄本の交付を請求できます。

7. 根拠法令・通達等

項目 根拠法令等
遺言能力(15歳以上) 民法961条
遺言の方式(普通方式3種類) 民法967条
自筆証書遺言(財産目録は自書不要) 民法968条
公正証書遺言 民法969条、969条の2
秘密証書遺言 民法970条
証人・立会人の欠格事由 民法974条
遺言の撤回 民法1022条〜1026条
遺言書の検認 民法1004条(公正証書遺言は同条2項で適用除外)、1005条(過料)
遺言による相続分の指定・分割方法の指定・分割の禁止 民法902条、908条
遺産分割協議 民法907条
遺言執行者の権利義務・妨害行為の禁止 民法1012条、1013条
遺留分(権利者・割合・算定の基礎・侵害額請求・期限・放棄) 民法1042条〜1049条
遺留分侵害額の支払いと相続税(更正の請求・修正申告) 相続税法30条、31条、32条1項3号
遺留分侵害額を資産で支払った場合の譲渡所得 所得税基本通達33-1の6
自筆証書遺言の法務局保管制度・検認不要 法務局における遺言書の保管等に関する法律(保管の申請:4条、検認の適用除外:11条、手数料:12条及び政令)
保管証書遺言(デジタル遺言)の創設・押印要件の見直し 民法等の一部を改正する法律(令和8年法律第45号)
公証人手数料 公証人手数料令(令和7年10月1日改正)
公正証書のデジタル化 公証人法(令和5年法律第53号による改正)
遺言と異なる遺産分割と贈与税 国税庁タックスアンサー No.4176
遺産未分割の場合の課税 相続税法55条

参考

8. まとめ

  • 遺言の普通方式には、自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言があり、今後は保管証書遺言(デジタル遺言)が加わります。
  • 有効な遺言があれば、原則として遺言の内容どおりに遺産を分けるため遺産分割協議は不要です。
  • ただし、相続人全員(受遺者がいればその同意が必要)が合意すれば、遺言と異なる内容で遺産分割することも可能です。
  • 自筆証書遺言は法務局の保管制度(手数料3,900円)を使えば、紛失・改ざんを防ぎ、検認も不要になります。
  • 公正証書遺言は証人2人と手数料が必要ですが、形式不備で無効になるリスクが最も低い方法です。
  • どの方式でも、遺留分や相続税への影響を踏まえた内容にすることが大切です。

当事務所(税理士・行政書士)では、遺言書の作成にあたって、相続税の試算や小規模宅地等の特例の適用、遺留分を踏まえた財産の分け方のご提案を行っております。行政書士として、遺言書の文案作成や法務局保管の自筆証書遺言の作成サポート、公正証書遺言の作成サポートや証人立会いにも対応しております。なお、相続人間で紛争が生じている案件については、提携する弁護士をご紹介いたします。

※本記事は、令和8年10月5日現在の法務省・日本公証人連合会・国税庁の公表資料等を参考に作成しています。今後の法改正や個別のご事情により取扱いが異なる場合があります。

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  6. 小規模宅地の特例

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  7. 税額控除

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