個人が暗号資産を売却等した場合の税務

ビットコインと電卓

はじめに

ビットコインなどの暗号資産を個人で売買して利益が出た場合、その利益は原則として「雑所得」として総合課税の対象になり、給与所得などと合算して最高55%(所得税・復興特別所得税と住民税の合計)の税率で課税されます。売却だけでなく、他の暗号資産との交換や、暗号資産での商品の購入についても課税の対象になる点に注意が必要です。

また、令和8年度の税制改正の大綱では、一定の暗号資産の取引について、20%の申告分離課税に移行する方針が示されています。

この記事では、国税庁「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」(令和7年12月)と所得税法、税制改正の大綱をもとに、個人が暗号資産を売却等したときの税金と、相続の場面での注意点を整理します。法人で取得した場合については、別の記事で解説します。

1. 暗号資産の所得区分と課税される場面

個人が暗号資産の取引で得た利益は、原則として雑所得になります。ただし、取引の規模が大きく、事業として行っていると認められる場合は、事業所得となることもあります(その年の取引の収入金額が300万円を超え、帳簿書類を保存している場合は、原則として事業所得とされます)。いずれも総合課税で、給与所得などと合算して累進税率(所得税5%〜45%、住民税10%)で課税されます。

取引 課税の有無 所得の考え方
暗号資産を日本円で売却 課税される 売却価額と取得価額の差額
暗号資産で商品を購入 課税される 商品の価額と取得価額の差額
暗号資産を他の暗号資産と交換 課税される 交換で取得した暗号資産の時価と取得価額の差額
日本円で暗号資産を購入して保有 課税されない 保有しているだけでは、価格が上がっても所得は生じない
個人への贈与 贈与した人に課税 贈与時の時価を収入に算入(贈与された人は贈与税の対象)

【注意】暗号資産同士の交換や、暗号資産での支払いは、日本円に換えていなくても課税の対象になります。また、個人に暗号資産を贈与した場合は、受けた人に贈与税がかかるだけでなく、贈った人にも贈与時の時価で売ったものとして所得税がかかります。

根拠:所得税法27条、35条、36条、40条、所得税基本通達35-2/国税庁「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」1-1〜1-4、2-2、2-10

2. 所得の計算と取得価額の計算方法

暗号資産を売却したときの所得は、次のように計算します。

所得金額 = 売却価額 − 売却した暗号資産の取得価額(譲渡原価) − その他の必要経費(売買手数料など)

取得価額は「総平均法」が原則、「移動平均法」も選択できる

同じ暗号資産を何回かに分けて購入した場合、売却した分の取得価額は「平均の単価」で計算します。個人の場合は、次の2つの方法から選べます。

方法 計算の仕方 選び方
総平均法(原則) 年初に保有していた分とその年(1月1日〜12月31日)に取得した分の金額の合計を、その合計数量で割って平均単価を求める 届出をしなければ総平均法になる
移動平均法 購入のたびに、その時点の平均単価を計算し直す 「暗号資産の評価方法の届出書」を提出する

評価方法は、すべての暗号資産に一括して適用されるのではなく、ビットコイン、イーサリアムなど暗号資産の種類(銘柄)ごとに選ぶことができます。届出書は、その種類の暗号資産を初めて取得した年分の確定申告期限(原則として翌年3月15日)までに税務署に提出します。途中で方法を変える場合は、変えようとする年の3月15日までに変更承認申請書を提出します。ただし、今の評価方法を採用してから3年を経過していない場合は、特別な理由がない限り、変更は認められません(所得税法施行令119条の4第2項、所得税基本通達48の2-3。棚卸資産の評価方法の変更に関する所得税基本通達47-14を準用)。

必要経費になるもの

  • 売却した暗号資産の取得価額(譲渡原価)
  • 売買の際に支払った手数料
  • 取引に直接必要な通信費やパソコンなどの購入費用(一定額以上のパソコンは減価償却が必要)

【注意】取得価額が分からないと、所得を正しく計算できません。取引所の年間取引報告書や取引履歴、銀行口座の入出金記録で確認します。なお、売却価額の5%を取得価額として計算することも認められています。実際の取得価額が売却価額の5%より少ない場合(大きく値上がりした場合)は5%の方が有利ですが、実際の取得価額の方が多い場合は税金が増えてしまいます。取引の記録は必ず残しておきましょう。

根拠:所得税法36条、37条、48条の2、所得税法施行令119条の2〜119条の4、所得税基本通達48の2-2〜48の2-4、47-14/国税庁FAQ 1-1、1-5、2-3〜2-7

3. ステーキング・マイニング・レンディング・分裂の取扱い

取引 所得が生じる時期 取得価額
ステーキング・マイニング・レンディングで暗号資産を受け取った 受け取ったとき(その時の時価が収入) 受け取ったときの時価
ハードフォークなどの分裂で新しい暗号資産を取得した 取得したときには所得は生じない 0円(売却したときに売却価額全額が所得になる)

【注意】ステーキングなどで受け取った暗号資産は、日本円に換えていなくても、受け取った時点で所得になります。その後に価格が下がっても、受け取ったときの所得は取り消されません。受け取った日時と時価を記録しておきましょう。

根拠:所得税法36条/国税庁FAQ 1-6、1-7

4. 損失の取扱いと確定申告

損失は他の所得と相殺できない

雑所得の計算で生じた損失は、給与所得など他の所得と差し引く(損益通算する)ことはできません。また、翌年以降に繰り越すこともできません。同じ年の他の雑所得(他の暗号資産の利益など)とは相殺できます。

確定申告が必要な人

区分 確定申告が必要な場合
給与所得者(年末調整を受けている人) 給与以外の所得(暗号資産の利益など)の合計が20万円を超える場合
それ以外の人 暗号資産の利益を含めた所得の合計が基礎控除などを超える場合

暗号資産交換業者から交付される「年間取引報告書」を使うと、国税庁の「暗号資産の計算書(総平均法用・移動平均法用)」で所得を計算できます。

【注意】住民税には20万円以下の申告不要の特例はありません。所得税の確定申告が不要でも、住民税の申告は必要です。また、複数の取引所や海外の取引所、ウォレットを使っている場合は、すべての取引を合わせて計算する必要があります。

根拠:所得税法69条、121条/国税庁FAQ 2-8、2-9、2-11

5. 暗号資産を相続した場合の税金

相続税の評価

暗号資産も相続税・贈与税の対象です。活発な市場がある暗号資産は、相続開始日(亡くなった日)の取引価格(暗号資産交換業者が公表する価格など)で評価します。

相続人が売却したときの取得価額

相続や包括遺贈、相続人への特定遺贈で暗号資産を取得した場合、相続人の取得価額は相続開始時の時価ではありません。被相続人が選んでいた方法(総平均法など)で計算した被相続人の取得価額を引き継ぎます。そのため、被相続人が安く買った暗号資産を相続人が売却すると、被相続人が保有していた間の値上がり益も含めて、相続人の雑所得として課税されます。

相続税と所得税がどちらも最高税率になるおそれ

相続財産の多くを暗号資産が占めている場合、相続税を納めるために暗号資産を売却せざるを得ないことがあります。このとき、現行の制度では次のように二重に高い税率がかかるおそれがあります。

税金 課税の対象 最高税率
相続税 相続開始時の時価で評価した暗号資産 55%
所得税・住民税(相続人が売却したとき) 売却価額と、被相続人から引き継いだ取得価額との差額(雑所得・総合課税) 約55%(所得税45%・復興特別所得税・住民税10%)

例えば、被相続人が100万円で購入したビットコインが、相続開始時に10億円になっていたとします。仮に相続財産はこのビットコインだけとし、相続人は子1人で、納税のために全額を10億円で売却するものとします。売却時の取得価額は、実際の100万円より有利な売却価額の5%(5,000万円)を使用して申告したとした場合の計算例です。

税金 計算 税額
相続税 (10億円−3,600万円)×55%−7,200万円 約4億5,800万円
所得税・復興特別所得税 (10億円−5,000万円)×45%−479万6千円、さらに2.1%を加算 約4億3,200万円
住民税 9億5,000万円×10% 約9,500万円
合計 ― 約9億8,500万円

相続税は最高税率55%、所得税・住民税も最高税率(約55%)が適用され、税金の合計は約9億8,500万円となります。10億円を売却しても、手元に残るのは約1,500万円という計算です(売買手数料、各種控除、社会保険料等は考慮していません)。

【注意】株式や土地を相続して売却した場合には、相続税の一部を取得費に加算できる特例(取得費加算の特例)がありますが、この特例は譲渡所得が対象で、雑所得となる暗号資産には適用されません。相続財産に占める暗号資産の割合が大きい方は、生前から納税資金の確保や、売却の時期・方法を検討しておくことが重要です。

贈与した場合

個人に暗号資産を贈与した場合は、その贈与を受けた暗号資産は贈与税の対象になるほか、贈った人も贈与時の時価で売却したものとして所得税の対象になります。受けた人の取得価額は、贈与時の時価です。

根拠:所得税法40条、48条の2、所得税法施行令119条の6、所得税基本通達40-2・40-3、相続税法22条、財産評価基本通達5/租税特別措置法39条(取得費加算の特例)/国税庁FAQ 1-5、2-10、4-1

6. 税制改正の動向(申告分離課税への移行)

令和7年12月26日に閣議決定された「令和8年度税制改正の大綱」では、金融商品取引法の改正を前提に、暗号資産の課税を次のように見直す方針が示されています。

項目 現行 改正後(大綱)
対象 すべての暗号資産 「特定暗号資産」(金融商品取引法の登録簿に登録されている暗号資産等)を、暗号資産取引業者に対して譲渡した場合
課税方式 雑所得(総合課税) 申告分離課税
税率 累進税率(最高約55%) 20%(所得税15%・住民税5%、別途復興特別所得税)
損失の繰越 できない 翌年以降3年間繰越控除できる
適用時期 ― 金融商品取引法の改正法の施行日の属する年の翌年1月1日以後の譲渡

前提となる「金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律」(令和8年法律第64号)は、令和8年7月15日に成立し、7月23日に公布されました。ただし、法律の成立ですぐに分離課税になるわけではありません。分離課税は、改正法の施行日の属する年の翌年1月1日以後の譲渡から適用されます。暗号資産関係の規定の施行日は今後政令で定められますが、令和9年中の施行となれば、分離課税は令和10年(2028年)1月1日以後の譲渡から適用されることになります。

なお、この改正により、暗号資産は決済手段ではなく金融商品として金融商品取引法の規制を受けることになり、株式と同じようにインサイダー取引規制が設けられます(罰則は5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金など、課徴金も対象)。未公表の重要な情報を知って暗号資産を売買すると、規制の対象になり得ます。対象となる「重要事実」の範囲などは、今後の政令・内閣府令で定められます。

【注意】分離課税の対象は、登録された「特定暗号資産」を国内の暗号資産取引業者に譲渡した場合に限られる見込みです。海外の取引所や個人間での取引、登録されていない暗号資産は対象外となる可能性が高く、これらは引き続き総合課税(大綱では総合課税の譲渡所得とし、特別控除や長期保有の2分の1は適用しないとされています)になると考えられます。詳細は今後の法令の整備を待つ必要があります。

【注意】大綱で分離課税の対象とされているのは、特定暗号資産を取引業者に対して「譲渡」した場合の利益と、暗号資産デリバティブ取引などです。レンディングやステーキングで受け取る収益は譲渡による利益ではないため、分離課税の対象にはならず、引き続き総合課税となる可能性があります。また、暗号資産同士の交換も譲渡に当たりますが、交換の相手方や交換する暗号資産が特定暗号資産かどうかによって、分離課税と総合課税のどちらになるかが分かれることが考えられます。いずれも今後の法令や国税庁の取扱いの公表を確認する必要があります。

相続の場面への影響

分離課税が導入されると、相続人が納税のために特定暗号資産を国内の取引業者で売却した場合、利益にかかる税率は最高約55%から約20%に下がります。5章の例でいえば、所得税・住民税は約5億2,700万円から約1億9,300万円(9億5,000万円×20.315%)になり、手元に残る金額は約1,500万円から約3億4,900万円に増えます。相続税と所得税の両方が最高税率になるという問題は、大きく解消される可能性が高いと考えられます。

根拠:令和8年度税制改正の大綱(令和7年12月26日閣議決定)一・3(2)/金融庁「令和8年度税制改正について」「金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律案」

7. 根拠法令・通達

項目 根拠法令・通達
所得区分(雑所得・事業所得) 所得税法27条、35条
収入金額・必要経費 所得税法36条、37条
暗号資産の譲渡原価の計算(総平均法・移動平均法) 所得税法48条の2、所得税法施行令119条の2〜119条の4
取得価額(相続等による取得を含む) 所得税法施行令119条の6
売却価額の5%を取得価額とする取扱い 所得税基本通達48の2-4
贈与・遺贈時のみなし譲渡 所得税法40条、所得税基本通達40-2、40-3
損益通算 所得税法69条
相続税・贈与税の評価 相続税法22条、財産評価基本通達5
取得費加算の特例(暗号資産には適用なし) 租税特別措置法39条
評価方法の変更(3年経過前の変更申請) 所得税法施行令119条の4第2項、所得税基本通達48の2-3、47-14
申告分離課税への移行 令和8年度税制改正の大綱

参考(国税庁・財務省・金融庁)

参考資料(暗号資産の計算書)

国税庁では、暗号資産の所得を計算するための「暗号資産の計算書(総平均法用・移動平均法用)」(Excel・PDF)を公開しています。暗号資産交換業者から届く年間取引報告書を使って計算する場合は「総平均法用」を使います。

8. まとめ

  • 個人の暗号資産の利益は、現行では原則として雑所得(総合課税)で、最高約55%の税率がかかります。売却だけでなく、暗号資産同士の交換や商品の購入も課税対象です。
  • 取得価額は総平均法が原則です。届出をすれば移動平均法も選べます。
  • 損失は他の所得と相殺できず、繰り越すこともできません。
  • 相続人は被相続人の取得価額を引き継ぐため、納税のために売却すると、相続税と所得税の両方が最高税率になるおそれがあります。
  • 早ければ令和10年から、国内の取引業者を通じた登録暗号資産の取引は20%の申告分離課税になる見込みで、相続時の税負担の問題も大きく緩和される可能性が高いと考えられます。

当事務所では、暗号資産の所得計算や確定申告、暗号資産を含む相続税申告や生前の対策のご相談をお受けしております。お気軽にご相談ください。

※本記事は、令和8年10月現在の法令等と税制改正の大綱に基づいて作成しています。分離課税の詳細は今後の法令の整備により変わる場合があります。

関連記事

  1. 確定申告

    準確定申告とは? ~亡くなった方の所得税の申告・期限・注意点~

  2. 保険税務 個人

    個人で契約した生命保険の税金 ~加入から保険金受取り・解約・贈与…

  3. 小規模宅地の特例

    小規模宅地等の特例「家なき子特例」とは?

  4. 債務

    相続税で控除できる債務・できない債務

  5. 医療費控除について

  6. スカイプ

    東京国税局による確定申告の電話相談の支援業務

  7. 医療費控除について(その2)

  8. 国税庁が公表した確定申告で間違いやすい12の事例

PAGE TOP
目次