自宅マンションと貸しているマンションを売却したときの譲渡所得の計算

はじめに
マンションを売却して利益(譲渡益)が出ると、譲渡所得として所得税・住民税がかかります。同じマンションでも、自分が住んでいた自宅として売るのか、人に貸していた賃貸用として売るのかで、税金の計算は大きく変わります。
違いが生じる主なポイントは次の3つです。
- 建物の取得費から差し引く減価償却費の計算方法(自宅は「非業務用」、賃貸は「業務用」)
- 自宅にだけ認められる租税特別措置法の特例(3,000万円特別控除、軽減税率、買換え特例、譲渡損失の損益通算・繰越控除)
- 住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)との関係
この記事では、購入時に土地と建物の価額が区分されていない場合の按分方法から始めて、自宅と賃貸の違いを計算例で比較します。
【注意】本記事は令和8年10月時点の法令に基づいています。特例には適用期限があり、改正されることがありますので、実際の申告の際は最新の法令をご確認ください。
1. 譲渡所得の計算の仕組み
(1) 計算式
土地・建物を売ったときの譲渡所得は、他の所得と分けて計算する分離課税です。
課税譲渡所得金額 = 譲渡価額 -(取得費 + 譲渡費用)- 特別控除額
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 譲渡価額 | 売却代金。固定資産税の精算金も含みます |
| 取得費 | 土地の購入代金+建物の購入代金から減価償却費相当額を差し引いた金額。購入手数料、登録免許税、不動産取得税、印紙税なども含みます |
| 譲渡費用 | 売るために直接かかった費用(仲介手数料、売買契約書の印紙税、測量費など) |
| 特別控除額 | 自宅の3,000万円特別控除など、特例を受ける場合の控除額 |
【注意】登録免許税・不動産取得税などの税金は、賃貸用(業務用)の場合は取得費に含まれません。不動産所得の必要経費になるためです。
取得費が分からない場合は、譲渡価額の5%を取得費(概算取得費)とすることもできます。購入時の契約書は必ず保管しておきましょう。
(2) 短期譲渡と長期譲渡
所有期間は、売った年の1月1日現在で判定します。実際の保有期間ではない点に注意が必要です。
| 区分 | 所有期間(売った年の1月1日現在) | 所得税 | 復興特別所得税 | 住民税 | 合計 |
|---|---|---|---|---|---|
| 短期譲渡所得 | 5年以下 | 30% | 所得税額×2.1% | 9% | 39.63% |
| 長期譲渡所得 | 5年超 | 15% | 所得税額×2.1% | 5% | 20.315% |
【注意】たとえば令和3年10月に買ったマンションを令和8年11月に売ると、実際には5年を超えて保有していますが、令和8年1月1日現在では5年以下なので短期譲渡所得になります。
(3) 損失が出た場合
土地・建物の譲渡損失は、他の土地・建物の譲渡所得とは差し引きできますが、給与所得や事業所得などとの損益通算はできません。例外は、4.(4)で説明する自宅の譲渡損失の特例だけです。
根拠:所得税法33条(譲渡所得)、38条(取得費)、租税特別措置法31条(長期譲渡所得)、32条(短期譲渡所得)、31条の4(概算取得費)、復興財源確保法13条、所得税基本通達38-1・38-9・38-10、国税庁タックスアンサーNo.3252 取得費となるもの・No.3208 長期譲渡所得の税額の計算・No.3211 短期譲渡所得の税額の計算・No.3203 不動産を譲渡して譲渡損失が生じた場合
2. 総額で購入し土地と建物の区分が不明な場合の按分
建物は減価償却をしますが、土地はしません。そのため、取得費を計算するには購入代金を土地と建物に分ける必要があります。マンションは「総額○○万円」で売買されることが多く、契約書に区分がないこともあります。
(1) 区分の方法
まず①・②で区分を確認します。それができない場合は、③・④のうち資料に応じて合理的な方法を検討します(③と④の間に法令上の一律の優先順位があるわけではありません)。
| 順番 | 方法 | 内容 |
|---|---|---|
| ① | 契約書の区分 | 契約書に土地と建物の価額が分けて書かれていて、その金額がおおむね適正なら、その金額を使います |
| ② | 消費税額から逆算 | 契約書に建物の消費税額が書かれていれば、消費税額÷消費税率×(1+消費税率)で税込の建物価額が分かります(土地は非課税なので、消費税はすべて建物分です) |
| ③ | 建物の標準的な建築価額表 | 国税庁が公表する建築年ごとの構造別単価×床面積(マンションは専有部分の床面積でもよい)で建物価額を求め、総額から差し引いた残りを土地とします |
| ④ | 時価の比率で按分 | 取得時の土地と建物の時価(固定資産税評価額などを参考)の比率で総額を按分します |
新築マンションを分譲会社から買った場合は、契約書に消費税額が書かれていることが多いので、②の方法が使えます。個人が自己の居住用としていた中古マンションをその個人から買った場合など、建物に係る消費税額が示されていないときは、③や④の方法を検討します。
【注意】③の標準的な建築価額表は、新築時の単価です。中古で買った場合は、表で求めた新築時の価額から、建築時から取得時までの減価償却費相当額を差し引いて取得時の建物価額を求めます。
(2) 消費税額から逆算する例
平成26年10月に新築マンションを総額5,000万円で購入し、契約書に「うち消費税額160万円」(税率8%)と書かれていたとします。
- 建物価額(税込)=160万円÷8%×108%=2,160万円
- 土地価額=5,000万円-2,160万円=2,840万円
【注意】自宅を貸しに出した場合や賃貸用に買った場合は、毎年の減価償却費の計算にもこの区分を使います。購入時に決めた区分を売却時まで一貫して使うことが大切です。
根拠:所得税法38条、(考え方の参考)租税特別措置法通達35の2-9・36の2-9(土地等と建物等を一括取得した場合の区分)、国税庁「建物の標準的な建築価額による計算とは」・「令和7年分 建物の標準的な建築価額表」・No.3261 建物の取得費の計算
3. 減価償却費の計算方法の違い
建物の取得費は、購入代金から所有期間中の減価償却費相当額を差し引いて計算します。自宅(非業務用)と賃貸(業務用)では、この計算方法が違います。
(1) 自宅マンション(非業務用)
自宅は毎年の確定申告で減価償却費を計上していないため、売るときにまとめて計算します。
減価償却費相当額 = 建物の取得価額 × 0.9 × 償却率 × 経過年数
- 償却率は、法定耐用年数の1.5倍の年数(1年未満の端数は切捨て)に対応する旧定額法の償却率を使います。
- 経過年数は、6か月以上の端数は1年とし、6か月未満の端数は切り捨てます。
- 減価償却費相当額は、建物の取得価額の95%が限度です。
| 構造 | 1.5倍した耐用年数 | 非業務用の償却率 |
|---|---|---|
| 木造 | 33年(22年×1.5) | 0.031 |
| 木骨モルタル造 | 30年(20年×1.5) | 0.034 |
| (鉄骨)鉄筋コンクリート造 | 70年(47年×1.5) | 0.015 |
| 金属造(骨格材の肉厚3mm以下) | 28年(19年×1.5) | 0.036 |
| 金属造(骨格材の肉厚3mm超4mm以下) | 40年(27年×1.5) | 0.025 |
マンションの多くは鉄筋コンクリート造なので、償却率は0.015です(住宅用の耐用年数47年×1.5=70年に対応)。
(2) 貸しているマンション(業務用)
賃貸用は、毎年の不動産所得の計算で減価償却費を必要経費にしています。売るときは、取得から売却までに必要経費にした減価償却費の累計額を差し引きます。
- 建物の償却方法は、平成10年4月1日~平成19年3月31日に取得したものは旧定額法、平成19年4月1日以後に取得したものは定額法です。
- 鉄筋コンクリート造の住宅用は耐用年数47年、定額法の償却率は0.022です。
- 中古で取得した場合は、簡便法による耐用年数を使えます。法定耐用年数の一部を経過している場合は(法定耐用年数-経過年数)+経過年数×20%、全部を経過している場合は法定耐用年数×20%で計算し、1年未満の端数は切り捨て、2年未満となるときは2年とします。
- 1年の途中で貸し始めた年・売った年は、月数で按分します。
【注意】賃貸用の減価償却費は、実際に経費にしたかどうかに関係なく、償却すべきだった金額を差し引きます(償却費の計上漏れがあっても、取得費が大きくなるわけではありません)。
(3) 自宅を途中から貸した場合
自宅だった期間は非業務用の方法(取得価額×0.9×耐用年数の1.5倍に対応する旧定額法の償却率×経過年数)で減価の額を計算し、取得価額から差し引いて、貸し始めた時の未償却残高を求めます。貸し始めた後の毎年の減価償却費は、定額法の場合、未償却残高に償却率を掛けるのではなく、当初の取得価額×業務用の償却率で計算します(未償却残高が1円になるまで)。売るときは、自宅期間の減価の額と賃貸期間の減価償却費の累計額の両方を差し引きます。
根拠:所得税法38条2項、49条、所得税法施行令85条(非業務用資産の減価の額)、120条の2(定額法)、135条(非業務用から業務用に転用した場合)、減価償却資産の耐用年数等に関する省令別表第一・3条(中古資産の耐用年数)、所得税基本通達38-8・49-3、国税庁タックスアンサーNo.3261 建物の取得費の計算
4. 自宅マンションを売った場合の特例
自宅(居住用財産)を売った場合には、租税特別措置法に次の特例があります。いずれも確定申告が必要です。
| 特例 | 根拠 | 所有期間の要件 | 内容 |
|---|---|---|---|
| 3,000万円特別控除 | 措法35条 | なし | 譲渡益から最高3,000万円を控除 |
| 軽減税率の特例 | 措法31条の3 | 10年超 | 6,000万円以下の部分の税率を引下げ |
| 特定のマイホームの買換え特例 | 措法36条の2 | 10年超(居住期間10年以上) | 譲渡益への課税を将来に繰延べ |
| 買換えの場合の譲渡損失の特例 | 措法41条の5 | 5年超 | 譲渡損失を他の所得と損益通算・3年間繰越控除 |
| 特定のマイホームの譲渡損失の特例 | 措法41条の5の2 | 5年超 | ローン残高を下回る部分の損失を損益通算・3年間繰越控除 |
(1) 3,000万円特別控除(措法35条)
所有期間に関係なく、譲渡益から最高3,000万円を差し引けます。主な要件は次のとおりです。
- 現在住んでいる家屋か、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること
- 売った年の前年・前々年にこの特例や譲渡損失の特例を受けていないこと
- 売った年・前年・前々年に買換え・交換の特例を受けていないこと
- 親子・夫婦など特別の関係がある人への売却でないこと
国税庁は、住まなくなった家屋について「住まなくなった日以後、どのような用途に使用してもかまいません」と説明しています。自宅を貸しに出していても、この期限内に売れば3,000万円特別控除を受けられます。
【注意】この特例を受けることだけを目的に入居した家屋、一時的な住まい、別荘は対象外です。また、特例を受けて税金がゼロになっても、確定申告が必要です。
(2) 軽減税率の特例(措法31条の3)
売った年の1月1日現在で、家屋と敷地の所有期間がともに10年を超えている場合は、税率が下がります。3,000万円特別控除と併用できます。
| 課税長期譲渡所得金額 | 所得税 | 復興特別所得税 | 住民税 | 合計 |
|---|---|---|---|---|
| 6,000万円以下の部分 | 10% | 所得税額×2.1% | 4% | 14.21% |
| 6,000万円超の部分 | 15% | 所得税額×2.1% | 5% | 20.315% |
(3) 特定のマイホームを買い換えた場合の特例(措法36条の2)
自宅を売って新しい自宅を買う場合に、売却代金より買換資産の取得価額が多ければ、その年には譲渡益に課税されません。令和9年12月31日までの譲渡が対象です。
- 売却代金が1億円以下であること
- 売った年の1月1日現在で家屋・敷地の所有期間がともに10年超、居住期間が通算10年以上であること
- 売った年の前年から翌年までの3年間に買換資産を取得し、一定の期限までに住むこと
- 買換資産は床面積50㎡以上、土地面積500㎡以下であること(新築の省エネ基準、中古の築年数・耐震基準などの要件もあります)
【注意】買換え特例は「非課税」ではなく「課税の繰延べ」です。新しい自宅の取得費は、実際の購入代金ではなく、売った自宅の取得費・譲渡費用を基に、課税を繰り延べた譲渡益を反映して調整した金額になります。たとえば、取得費と譲渡費用の合計3,100万円の自宅を5,000万円で売り、6,000万円の自宅を買った場合、新しい自宅の取得費は3,100万円+(6,000万円-5,000万円)=4,100万円です。このため、将来その自宅を売ったときに譲渡益が大きくなります。また、3,000万円特別控除・軽減税率の特例とは選択制で、併用できません。譲渡益が3,000万円以下なら、3,000万円特別控除の方が有利です。
参考:国税庁タックスアンサーNo.3362 特定のマイホームを買い換えた場合の買換資産の取得費
(4) 損失が出た場合の特例(措法41条の5、41条の5の2)
自宅を売って損失が出た場合には、例外的に給与所得など他の所得と損益通算でき、引ききれない損失は翌年以後3年間繰り越して控除できます。どちらも令和9年12月31日までの譲渡が対象です。
| 項目 | 買換えの場合(措法41条の5) | 売るだけの場合(措法41条の5の2) |
|---|---|---|
| 所有期間 | 売った年の1月1日現在5年超 | 売った年の1月1日現在5年超 |
| 新しい自宅 | 前年から翌年までに取得、床面積50㎡以上、取得年末に償還期間10年以上の住宅ローンがあること。繰越控除を受ける各年の12月31日にも、このローンがあること | 不要 |
| 売った自宅のローン | 不要 | 売買契約日の前日に償還期間10年以上の住宅ローン残高があり、売却代金がそれを下回ること |
| 対象となる損失 | 譲渡損失の額(繰越控除は敷地500㎡超の部分を除く) | ローン残高から売却代金を差し引いた額が限度 |
| 繰越控除の所得要件 | 合計所得金額3,000万円以下の年 | 合計所得金額3,000万円以下の年 |
【注意】繰越控除を受けるには、損失が出た年に確定申告し、その後も連続して確定申告書を提出する必要があります。
根拠:租税特別措置法31条の3、35条、36条の2、36条の3、41条の5、41条の5の2、地方税法附則34条の3、国税庁タックスアンサーNo.3302 マイホームを売ったときの特例・No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例・No.3355 特定のマイホームを買い換えたときの特例・No.3370 マイホームを買い換えた場合に譲渡損失が生じたとき・No.3390 住宅ローンが残っているマイホームを売却して譲渡損失が生じたとき
5. 貸しているマンションを売った場合
購入当初から賃貸用で、自分が居住していないマンションは、原則として4.の居住用の特例を使えません。譲渡益には、所有期間に応じて通常の税率(長期20.315%、短期39.63%)がそのままかかります。
| 項目 | 自宅マンション | 貸しているマンション |
|---|---|---|
| 減価償却費 | 売却時にまとめて計算(耐用年数×1.5、×0.9) | 毎年の必要経費の累計額 |
| 登録免許税・不動産取得税 | 取得費に含める | 不動産所得の必要経費(取得費に含めない) |
| 3,000万円特別控除 | あり | なし |
| 軽減税率 | あり(10年超) | なし |
| 買換え特例 | あり(特定のマイホーム) | 居住用の特例はなし |
| 損失の損益通算 | 特例で可(5年超) | 不可 |
(注)表の「なし」「不可」は、購入当初から賃貸用で自分が住んだことのないマンションの場合です。元自宅を貸している場合は、(2)の【注意】のとおり例外があります。
(1) 売った年の減価償却費
売った年の1月から売った時までの減価償却費は、不動産所得の必要経費に算入する方法が認められます。本記事では、この方法で計算し、その分も含めた累計額を建物の取得価額から差し引きます。譲渡所得の取得費との二重控除はできません。
(2) 損失が出た場合
賃貸用マンションの譲渡損失は、同じ年に売った他の土地・建物の譲渡益とだけ差し引きできます。不動産所得や給与所得との損益通算、翌年以後への繰越しはできません。
【注意】自宅を貸しに出した場合でも、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売れば、自宅の特例が使えます。この期限を過ぎると、賃貸用としての課税になります。自宅を貸している方は、売却時期に注意が必要です。
【注意】消費税の課税事業者が賃貸用マンションを売ると、建物部分の売却代金に消費税がかかります(土地は非課税)。住宅の家賃は非課税なので免税事業者の方が多いですが、他に事業をしている方やインボイス発行事業者の方は確認が必要です。
根拠:所得税法26条(不動産所得)、37条、38条、49条、租税特別措置法31条1項・32条1項(損益通算の制限)、所得税基本通達38-9、消費税法4条、9条、別表第二(土地・住宅の貸付けの非課税)
6. 計算例で比較
同じマンションを、自宅として売った場合と、購入直後から貸していた場合で比較します。
前提
- 平成26年10月に新築マンション(鉄筋コンクリート造)を総額5,000万円で購入(2.(2)の例と同じ。建物2,160万円、土地2,840万円)
- 令和8年6月に6,000万円で売却、譲渡費用(仲介手数料など)200万円
- 所有期間は令和8年1月1日現在で11年超なので長期譲渡所得
- 計算を簡単にするため、購入時の諸費用は省略しています。売却年の売却時までの減価償却費は、不動産所得の必要経費に算入する方法で計算します。所得控除の未控除額・税額控除・消費税は考慮せず、賃貸のケースは消費税の免税事業者として試算しています
(1) 建物の取得費
自宅の場合(非業務用)
- 経過年数:平成26年10月~令和8年6月=11年8か月→端数6か月以上は1年として12年
- 減価償却費相当額:2,160万円×0.9×0.015×12年=3,499,200円
- 建物の取得費:21,600,000円-3,499,200円=18,100,800円
貸していた場合(業務用、定額法、償却率0.022)
- 1年分:2,160万円×0.022=475,200円
- 平成26年(10月~12月の3か月):118,800円
- 平成27年~令和7年(11年):5,227,200円
- 令和8年(1月~6月の6か月):237,600円
- 累計額:5,583,600円
- 建物の取得費:21,600,000円-5,583,600円=16,016,400円
(2) 譲渡所得と税額の比較
| 項目 | 自宅マンション | 貸していたマンション |
|---|---|---|
| ①譲渡価額 | 60,000,000円 | 60,000,000円 |
| ②取得費(土地) | 28,400,000円 | 28,400,000円 |
| ③取得費(建物) | 18,100,800円 | 16,016,400円 |
| ④譲渡費用 | 2,000,000円 | 2,000,000円 |
| ⑤譲渡益(①-②-③-④) | 11,499,200円 | 13,583,600円 |
| ⑥特別控除 | 11,499,200円(3,000万円が限度) | 0円 |
| ⑦課税長期譲渡所得金額 | 0円 | 13,583,000円 |
| 所得税及び復興特別所得税 | 0円 | 2,080,200円 |
| 住民税 | 0円 | 679,100円 |
| 税金の合計 | 0円 | 2,759,300円 |
(注)貸していた場合の所得税:13,583,000円×15%=2,037,450円、復興特別所得税:2,037,450円×2.1%=42,786円、合計を100円未満切捨てて2,080,200円。住民税:13,583,000円×5%=679,150円を100円未満切捨て。
自宅は3,000万円特別控除により税金はゼロです(確定申告は必要です)。貸していた場合は、毎年の減価償却費が大きい分だけ建物の取得費が小さくなり、譲渡益も大きくなります。その上で特例がないため、約276万円の税金がかかります。
【注意】貸していた場合は、毎年の減価償却費が不動産所得の必要経費として税金を減らしています。その分、売却時に取得費が小さくなり、譲渡益が大きくなる仕組みです。
(3) 自宅で譲渡益が3,000万円を超える場合
たとえば自宅の譲渡益が4,000万円で、所有期間が10年超なら、残り1,000万円に軽減税率(14.21%)がかかります。
- 所得税及び復興特別所得税:1,000万円×10%=100万円、100万円×2.1%=2万1,000円、合計102万1,000円
- 住民税:1,000万円×4%=40万円
- 合計:142万1,000円(通常の税率20.315%なら203万1,500円)
7. 住宅ローン控除との関係
自宅を売って新しい自宅をローンで買う場合、売った自宅の特例と新しい自宅の住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は、特例によって併用できるものとできないものがあります。
(1) 併用できない特例
新しい自宅に住んだ年(居住年)とその前2年・後3年の計6年間に、次の特例を受けると、住宅ローン控除は受けられません。
- 3,000万円特別控除(措法35条1項)
- 軽減税率の特例(措法31条の3第1項)
- 特定のマイホームの買換え特例(措法36条の2)
- 交換の特例(措法36条の5)、既成市街地等内の買換え特例(措法37条の5)
たとえば、令和8年に新しい自宅に入居した場合、令和6年~令和11年に旧自宅を売って3,000万円特別控除を受けると、新しい自宅の住宅ローン控除は受けられません。
【注意】入居後3年以内に旧自宅を売って3,000万円特別控除などを受けると、すでに受けた住宅ローン控除もさかのぼって受けられなくなり、修正申告が必要になります。
(2) 併用できる特例
自宅の譲渡損失の特例(措法41条の5、41条の5の2)は、住宅ローン控除と併用できます。特に買換えの場合の特例(措法41条の5)は、新しい自宅に住宅ローンがあることが要件なので、住宅ローン控除と一緒に使うことが前提の制度です。
(3) どちらが有利か
譲渡益が出る場合は、「3,000万円特別控除などで減る税金」と「新しい自宅の住宅ローン控除の合計額」を比べて選びます。住宅ローン控除は年末残高等×0.7%を最大13年間受けられますが、住宅の種類と入居年で限度額が大きく異なります。譲渡益が小さく特例を受けなくても税金が少ない場合は、特例を使わずに住宅ローン控除を受けた方が有利なこともあります。
【注意】売った自宅について受けていた住宅ローン控除は、住まなくなった年以後は受けられません(その年の12月31日まで引き続き住んでいることが要件のためです)。自宅を貸しに出した場合も同じです。
根拠:租税特別措置法41条(住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除)、同法施行令26条、国税庁タックスアンサーNo.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合・No.3302・No.3370
8. 根拠法令・通達一覧
| 内容 | 根拠 |
|---|---|
| 譲渡所得・取得費 | 所得税法33条、38条、所得税基本通達38-1・38-9・38-10 |
| 非業務用建物の減価の額 | 所得税法38条2項、所得税法施行令85条 |
| 業務用建物の減価償却 | 所得税法49条、所得税法施行令120条の2、135条、耐用年数省令別表第一・3条 |
| 一括取得の区分(参考) | 措置法通達35の2-9、36の2-9 |
| 長期・短期譲渡所得 | 措法31条、32条、復興財源確保法13条 |
| 概算取得費 | 措法31条の4 |
| 軽減税率 | 措法31条の3、地方税法附則34条の3 |
| 3,000万円特別控除 | 措法35条 |
| 特定のマイホームの買換え | 措法36条の2、36条の3 |
| 譲渡損失の損益通算・繰越控除 | 措法41条の5、41条の5の2 |
| 住宅ローン控除 | 措法41条 |
まとめ
- 総額で買ったマンションは、まず契約書の区分や消費税額からの逆算で土地と建物に分け、それができない場合は標準的な建築価額表や時価の比率など、資料に応じて合理的な方法で分けます。
- 自宅の建物は「取得価額×0.9×償却率(耐用年数×1.5)×経過年数」、賃貸の建物は「毎年の減価償却費の累計額」を差し引きます。賃貸の方が取得費は小さくなります。
- 自宅には3,000万円特別控除、軽減税率、買換え特例、譲渡損失の損益通算・繰越控除がありますが、賃貸にはありません。
- 自宅を貸していても、住まなくなってから3年目の年末までに売れば自宅の特例が使えます。
- 新居への入居年とその前2年・後3年の間に、旧自宅の売却について3,000万円特別控除等を適用すると、その新居の住宅ローン控除は受けられません。譲渡損失の特例は併用できます。
- 特例を受けて税金がゼロになっても、確定申告が必要です。
【注意】どの特例を選ぶかで、売った年だけでなく、新しい自宅の住宅ローン控除や将来の売却時の税金まで変わります。売却前に税理士にご相談ください。








